FC2ブログ
2018/08/27

山本康夫の歌ー2018年(平成30年)9月号ー

   『広島新象』(昭和34年刊) ー新秋(昭和32年作)ー

     さむらいの末と伝えて世にうとく貧しく峡の村に育ちぬ
     秋風に灯かげさえゆく夜を惜しむ愛の詩篇の頁とざして
     潮(うしお)のごと善意のこころ胸に満つかかる新秋の夜の刻を得つ
     生きてあらば大学を卒ゆるころかなどといいて直かりし子が性を恋う
     客少なき夜更けの電車灯の明く見回して親し目の合う時に
     枝刈りて明るくなりしいちじくの幹にその実のつぎてふくるる

      
2018/07/18

山本康夫の歌ー2018年(平成30年)8月号ー

   『麗雲』(昭和22年刊) ー真澄8月6日の原子爆弾に罹災す(昭和20年作)ー

       
その声は真澄ならずやよくもよくもかかる深傷(ふかで)の体運び来し
     父母に一目逢はむの念のみに帰りしといふか子よ強かりし
       治療所へ急ぎ運ぶと吾子のせて妻とわが持つ戸板かなしも

     死を早む水とし聞けど欲り欲りて子が苦しめば水あたへつも
             お浄土にゆくとしいひて安らけき吾子なりしまさしく浄土はあらむ
     わが掌(て)おく額の温み冷え果てぬ吾子よ吾子よすでに命絶えたり
     手をとりて慰められし葬(はふ)り路をけふは汝が骸送りてぞ来ぬ



2018/07/04

山本康夫の歌ー2018年(平成30年)7月号ー

       『麗雲』(昭和22年刊) ー悪夢(昭和16年作)ー

          あさましき夢を見しかもうつそみの汗かきて一途にわが闘ひき
     夢ぬちのわれの裸形がかかりくるものかかりくるもの皆ねぢ伏せき
     暴れゐていぶかしみけりこの夢は地獄絵相にまさに通ふと
     うつつには譲歩をのみわれのねぎ来しが夢ぬちにして暴れまくりぬ
     み仏をたのむわれにして夢ぬちは阿修羅の心なほ燃えさかる
     あからひく昼を思へばよべの夢荒唐無稽にしてまとまりがたし