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2022/05/10

2022(令和4年)5月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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山本康夫の歌

あくがるる心を占めて刻々と満ちくる春の季感あたらし
時くれば治る病いにほけほけと寝て思う人生のよき面のみを
入院の日過ぎに思う勤務というものに制約されざる自由
わが病い篤くみとりてくれし母今は古里に老い深くいん
激痛のややおさまれば家の子の遊べるさまがまなかいに顕つ
戦場に傷つき苦しみし兵士らを思いぬ手術の痛みの際に

                 『山本康夫全歌集』(昭和六十三年刊)──補遺

20首抄(2022年4月号より抄出)
                                 
青空の私の帽子にめがけ降る雪はさながら意志もつごとく  津田育恵
真心にその折々に支えられ難のりこえて一歩踏み出す         中谷美保子
オミクロンという奇妙な名前にてじわじわ責め来(く)正月あけを     中元芙美子
ホッチキス針は小さな宝物からだを折って紙抱きしめる  西本光仁
昨夕の月食は見ず朝方に西の窓より光る月みる  延近道江
梅一輪あらばよろしと思いつつ誰にも会わぬ散歩道ゆく  松永玲子
冬日ざし浴びつつ少し遠くまで街を歩きてコロナ禍忘る  柳原孝子
迷惑をおかけしますと工事版に晴雨の日々を君はおじぎす  山本全子
束の間を園児の遊ぶ庭となるエナガ飛び交う冬の朝庭   新井邦子
暁の燃える赤玉わたりゆき沈み去るきわふたたび燃える  上田勝博
大楠は命のゆりかご十二畳の根元の穴に天神祀(まつ)らる  榎並幸子
餌を求め足らいて眠る野良猫の姿思いて我も眠りぬ   大垰敦子
わずかなる手足もて胴をくねらせてハレの舞台を泳ぐおみなご  岡田寿子
9・11に子を失いて二十年詮なきこととマイクに話す  金子貴佐子
寒々とマスク軍団うごめきて接種の順番競う街角  木村浩子
目の術後一粒一粒艶めけり夫のつくりしこの朝ごはん  栗原美智子
春の朝かっかと歩む石畳われは蹄鉄(ていてつ)もつにあらずや  黒飛了子
宇宙より還(かえ)り来る人歳晩に下界の人に何を語るや  鈴木敬子
女の孫が事あり顏してわれに対(む)き言わねど思う婚のことぞと  龍野日那子


2022/03/24

2022(令和4年)4月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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山本康夫の歌

戦争記事日毎読みつつ黒人のもてる素朴さは親しみおぼゆ
槍もちて無雑作に立てる黒人の精悍なる目付はしたに敬う
近代科学の武器をふかくも憎しむは未開国エチオピアをわが思ふらし
殺戮して国奪ひあふ人類の無惨さは太古の世よりありにき
何千といふ人一瞬に死にてゆく戦争絶ゆる世はも来らず
群衆に爆弾投ぜりといふ記事は小さき見出しつきて載(の)りたる

                『薫日』(昭和十二年刊)──祖国篇──伊エ交戦

20首抄(2022年3月号より抄出)
                                 
記事を読みわからぬ言葉調べつつふとこんな日を幸せと思う      佐藤静子
六甲の森に日米欧集いしがん研究の熱き闘い               滝沢韶一
献身的医師をたよりし患者らの犠牲多かり未来断たるる         竹添田美子
左右なしのまま七年が過ぎており夫なきわが身三省(さんせい)の日々 龍野日那子
タンポポの綿毛は小(ち)さきシャンデリア夕日にかざし異国を思う    田中淳子
ハナ、ハトと学び始めてよ 九十代誌友のみちびくtomorrow-road 月原芳子
障子あけ夜空仰ぎて就寝前すべての人らのしあわせを祈(ね)ぐ     富田美稚子
真樹社へ今日はハープとともに行く感謝をこめて音届けんと       弘野礼子
山際に日が沈むなり人の世を日すがら照らし見守りし後          村上山治
大海に還(かえ)るとは死を説かるれどわが自意識はうべなわざりき   吉田ヒロミ
ながれゆくものに感じてわれの身にながるるものと和し歌いたし     上田勝博
正月はテレビのウイーンフィル聴きてリズムを取れば身も軽くなる    畦 美紀恵
気配りの年末年始すぎさりて我のからだがひゅうひゅうと鳴る      榎並幸子
温かい指導賜りし短歌道九十歳われの宝となりぬ 大津タカヱ
裏山の深山につづく猪(しし)道あり三和土(みたき)のごとくかたまりており 折口幸子
もう鳴らぬ生家の電話番号をただ眺めおりスマホ画面に         金尾桂子
さす光浴びてほころぶ梅の花天守にささぐる春とおからず         菅 篁子
宇宙をば見ていただけのわれなれどプライドを捨てて歌よまんとす   栗原美智子
明日より昼間が少し長くなるコロナ禍の世にささやかな幸         小畑宣之
こまやかに木々を整え園丁はよき小春日を広げゆくなり          廣本 貢一

2022/02/24

2022(令和4年)3月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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山本康夫の歌

つれだち町ゆく子供よろこぶも手にあまる旗を両手に持ちて
午過ぎて街しづもりつたかだかと物うりの声の部屋にひゞくも
赤き芽をはつはつふきし鉢の楓ひかりの中におきてわが見る
芽をふきし鉢の楓は日のあたるところに出していつくしみたし
一本の若木の楓ひさかたのひかりの中に葉をひろげたり

        『萱原』(昭和五年刊)──大正十五年──春愁篇──お太子様の日に

20首抄(2022年2月号より抄出)
                                 
ささくれて棘(とげ)持つバラ科のハマナスは寒風の中我をはげます 勝地健一
嵐去りて萩にさわりはなかりけり花待ちて見る買い物帰り  川口浩子
紫紺ふかき巨砲を食(は)めば口中にしばし備前へ戻す秋風  近藤史郎
待つことの辛さを言えばなおさらに縁薄くなるこの人もまた  木村浩子
萩の花にシジミ蝶一つ訪(と)いきたり時を静かに刻みて遊ぶ  佐藤静子
思ひ出が独り歩きす 山畑に真白き蕎麦の花揺れてゐむ  澤田久美子
とりどりの衣装と舞いと和して閉ずパラリンピックは道を示して  柴村千織
寒々と帰りてエアコン急ぎつけご先祖さまのいます気のする  隅出志乃惠
寝椅子にはマジシャンのいてひとときを無意識界に寝落としの術 月原芳子
信条は論語の中の「恕(じょ)」とぞ言うその祖父を継ぐ中村哲氏  中村カヨ子
自分史は生きし証しぞ読む人は笑わんも身をいとしとおぼゆ  延近道江
外を歩く我につき来てあまゆるは猫好きなるが伝わりいるか  平本律枝
数滴の愛酒ふふめど眠られず今日の子悪を自(し)が手で裁く   松井嘉壽子
翼状針刺さるることに慣れし猫黙って我らに背を向けており  宮本京子
褐(かつ)ふかき分身地上に這 (は) はせつつひまはり夏のをはりをまとふ 森ひなこ
母もわれも^抒情短詩^書く異邦人^LE MADRIGAL^に座せしパリの夜 山本真珠
ままごとの髪に飾りし花八手 記憶の花の今朝まっ盛り  米田勝恵
河畔走るライトとろとろつながりて帰心乗すれどただに動かず   石井恵美子
公言をすることにより身をしばり継続をして力となせり  宇吹哲夫
欲も減りぬ贈りて喜ぶ友あればあれもこれもと手放せる我   岡田節子


2019/09/01

山本康夫の歌ー2019年(令和元年)9月号

    『広島新象』(昭和34年刊) ―高野山(昭和28年作)―

     老木々の小暗きもとを行き行きてつくづく聞けり山坊のかね
     一寺の鐘鳴りおわるころ打ち揺れて山上の鐘また鳴りいずる
     山川をとび渡る時砂白き水底を這う蟹がうつくし

2019/08/01

山本康夫の歌ー2019年(令和元年)8月号

    『麗雲』(昭和22年刊) ―歌の道(昭和21年作)―

     歌の道にこりゆく命見つめてはつたなき嘆きかへすいくたび
     歌に向ふこころはあつくなりゆけどその作(な)る歌に足ることもなし

     いたれりし大人(うし)らの道はひびけども仰ぐにきびしその歌ごころ

     歌の上にまことをこめてあるといふ思ひがわれの生(よ)を荘厳す

     わが力おぼつかなしと知るからに心つくして歌は詠むべし