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2019/05/30

山本康夫の歌ー2019年(令和元年)6月号

  『まきのや抄』(昭和51年刊) ー長崎 (昭和50年作)

             青村居の歌の集いに通いたる辺り見下ろす今のうつつに      茂吉高弟土橋青村
             生まれ来て歌知りしこと思おえばわれに長崎ありまた茂吉あり
             茂吉大人常来し寺ぞ五十年を隔てて福済寺の石段のぼる 
             本堂のなきまま大き中門の朱もあざやかに唐ぶりの寺
             原爆に壊えて伽藍なき唐寺の背戸に瓦のかけらを拾う




 
2019/05/06

山本康夫の歌ー2019年(令和元年)5月号

  『まきのや抄』(昭和51年刊) ー長崎 (昭和50年作)

     
原爆に焼け残りたる一つもて鳴らす聖堂のアンジェラスの鐘
     君在りし日に送りたるわが書幅如己堂に見る二十五年経て      故永井隆博士に
     長崎と広島にありて叫ばんと誓いきわれはこの縁にして         如己堂
     賜わりし如己堂の湯呑使い古り二十余年をわれは生き来ぬ
     壮麗なる浦上天主堂見上げつつ如己堂館長の君に従う
     如己堂にも聖堂にも花々咲き満つる季(とき)を来合いぬ今日五月尽
     原爆の酷さを告げて石造の足なしマリア一つ目マリア
2019/02/25

山本康夫の歌ー2019年(平成31年)3月号

   「真樹」(昭和9年5月号) ー江田島吟行ー

      訪ね来し島の村里ぬくければ春はやくして桜咲きたり
      咲きいでていまだまばらの桜花そのおのおののしめりを持てる
      打つれて庭にいでたる一ときをなすこともなく芝ふみあそぶ    林冷子氏方
      その立居今年は殊につつましうなりて乙女は生ひ立ちはやき    令嬢來子様
      弾き終へてピアノ放るるをとめ子の面ほんのりとほてりゐる見き  令嬢道子様
      とりどりに春の花咲くさ庭べに写真をとるとうちつれいでつ

      降りそむる雨の明るさ写真とると夕づく遅き庭に並べり
      夕づきて春の小雨となりしゆゑ今日の集ひの忘られなくに
      往くときは心はやりて見ざりける校門(もん)の桜の闇にほのけき   帰途 


 
2019/01/27

山本康夫の歌ー2019年(平成31年)2月号

   『広島新象』(昭和34年刊) ー別府日名子旅館(昭和29年作)ー

      名にききし日名子旅館の貴賓門昼を閉ざして豊かに構う

      敷つめし緋の絨の直線につづく廊下を導かれゆく

      菊の湯の湯気立ちこもるゆゆしさにつつしみてわが階下りゆく

      天皇陛下お召湯の木札かかるもと体ひたしてこぼすいでゆを

      天皇の召されしいでゆ浴槽の楠の香りが今も立ちつつ






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