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2023/07/26

2023(令和5年)8月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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   20首抄(2023年7月号より抄出)

はるばると気流にのりて飛び来たる黄砂は庭に終息すらし   廣田 怜子
〈ヴァンヴェール〉の窓に島根の風がみゆ母の山口を越えてきて島根  山本 真珠
部屋の中光差し込み一筋の道を作りて希望が生まる  杏野なおみ
再びの夫の病にいかにして平常心(びょうじょうしん)をわれ保てるや  榎並 幸子
スタジアムへと続く道にも県外の警察官立ちG7近し  大越由美子
怠惰とはキッチンに立つか食べないか私事の夕焼けている  大塚 朋子
もしあらば「聞き耳頭巾(ずきん)」は捉えなん殺さないでの鶏の悲鳴を 岡田 寿子
いい事といい時だけをつなぎゆく時間をかけて歩まん君と  勝地 健一
玄関で「またね」と言いて父母の「また来い」を待つ無人の生家  金尾 桂子
歌壇には今も続けり戦死せる父や夫や友思う歌  小畑 宣之
石段(いしきだ)をきっちりと踏み初詣(まう)で淑気ただよふ境内に入る  澤田久美子
古寺の池にメダカを住まわせて蓮の芽吹きに光注ぎぬ  鈴木 敬子
残存の能力次第に減りてゆくひと日の終わりを手合わせ床に  隅出志乃惠
夕方に籾(もみ)殻の山は煙突が煙出しつつじんわり燃える  高見 俊和
新緑の山あい縫いて行くさきは鄙(ひな)の温泉俗塵(じん)洗わん  竹添田美子
犬もまた共によろこぶ顔をみすさくらの下にて家族のリーダー  富田美稚子
三日月は大丈夫よと笑むごとくこの寒空に輝きてあり  豐田 敬子
日常に艱(かん)難辛苦多々あれど信頼あればほぼよき道へ 中谷美保子
この街の本屋さん閉じ一か月静かに巡る空間欲す  中元芙美子
歳月や快楽(けらく)を生きる刹那(せつな)あり苦痛に生きる無間の闇も 茄子四季人







2023/07/07

2023(令和5年)7月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏

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20首抄(2023年6月号より抄出)

絶対の愛など無いと言う我を愛する妻の思いに涙す      茄子四季人
空中に浮遊している言の葉を脳に取り込みサクサク食べる   西本 光仁
一年目男(お)の子の看護師かいがいし言葉やさしく血管さがせり   松尾 美鈴
若き日に机を並べし仲間たち妻の仏前に顔をそろえぬ     村上 山治
ファッションショーに見るごとき衣(きぬ)を身につけて女性キャスターウクライナを言う   森重 菊江
この初夏はおくれて咲ける柘榴の花一輪 庭の白日の星    山本 真珠
見ませ、父。列車も車も走るさま 二十年(はたとせ)祝する瀬戸大橋に 吉田 征子
中海の冬日をちらしふかふかと鴨は内らに影持たぬごと    新井 邦子
こころの歌三十 (そ) 一文字に言葉込め生きいる今を抉(えぐ)り取り出す 杏野 なおみ
すずらんとクリスマスローズはひっそりと庭に咲きおり下しか向けずと  畔 美紀恵
春先に弥山ゆ眺むる瀬戸の海水脈(みお)ひく先の舟影(ふなかげ)ちさき  榎並 幸子
引き揚げの従妹に教えられし味麦焦がし汁を珈琲(コーヒー)とよびき   金子貴佐子 
募り来る戦世にありて亡き母の書きし字まざまざと我の脳裏に 木村 浩子
空さえて流星群に押さるがに一つひとつをこなしゆく日々   栗原美智子
籠が落ち驚き飛び出すオカメインコ上昇気流に乗りて消え行く 小畑 宣之
ふっくらした頬(ほ)は見る度に細りゆきゼレンスキー氏の苦が胸に来る  佐藤 静子
震災の苦渋くぐりし色白のきゃしゃとも見ゆるピッチャー強し    竹添田美子
新しき知のdoor(ドア)とはと自問セリ人影のなき図書館に座して 田中 淳子
コを上に付けて憎まんロシアの地ツンドラに春は来るのでしょうか  月原 芳子
花の下に友らと集うひと時をさくらの匂い総身にて受く    富田美稚子