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2021/07/28

2021(令和3年)8月号

03072201_(3)八月号表紙_convert_20210728232325
題字 尾上柴舟 表紙 武永槙雄「南無佛太子像」

03043001_(2)裏表紙8_convert_20210729090244
03072204_(2)目次8右_convert_20210729091241
03072203_(2)目次8_convert_20210729091628

山本康夫の歌
親鸞聖人こもりましたる跡とありしんしんとして山気冷たし
わがみおやこもらしし庵に立ちきくや杉のこぬれを風通ふ音
昼暗き杉の木下の寺の屋根杉葉が散らふ音もきこゆる
かつかつと尾を引くごとくこだましてみ山の奥に木を伐れる音
老杉の根本に立ちてきき入れば鋸引く音もその奥どより
比叡の山深く入り来て佇むや鳴きかひしげし鳥のたぐひは
               『麗雲』(昭和二十二年刊)──比叡山(昭和二十一年作)

20首抄(2021年7月号より抄出)
海沿いのソーラーパネルに青鷺がチェスをするごと位置保ちおり   大越由美子        
道の辺に春の草花咲きみだれリハビリわれの心はずみぬ       大津タカヱ
風そよぐ古墳の丘に幼らと埴輪(はにわ)の馬のいななきを聴く     折口 幸子
被災地の定点観測十年(ととせ)経て今後もと言うカメラマンらは   川口 浩子
平凡な日常こそが幸せとどこまで知るぞソファなる犬は       菅  篂子
この星はコロナウイルスに侵さるれど花も咲きたり緑も芽ぶく    小巻由佳子
松手入れ庭師は一切私語を断ち松の心になりきり励む        廣本 貢一
木々眠るなかを咲きいる寒椿雪を食(は)みしに赤々として      近藤 松子
柴舟のこの世の影かと詠(うた)われしその意ようやく解かれたりけり 笹田四茂枝
好きなるを職業にする吾(あ)子ら見てさても我はと問いかけるなり  柴村 千織
きらきらと厚い葉の面輝けりさざんかの木が晴天告げる       隅出志乃惠
じいちゃんが赤ちゃん抱いて歩きおり寒い気にふれ大きくならん   高見 俊和
春秋に富める世代へワクチンを優先接種となすべきをいかに     滝沢 韶一
温(ぬく)き日に空を自在に飛ぶつばめ巣作りせわし春は光れり    豊田 敬子
空晴れて水の匂いを感じたり蛙の声がきこえくる今         延近 道江
神妙に花器と鋏(はさみ)を取りそろえ初弟子となり子の前に座す   濱本たつえ
昨夜見た夢の片鱗ふと浮かび思考のすべてを傾ける無駄       福光 譲二
この坂は我鍛えきぬ一歩ずつ白詰草に目守(まも)られ進む      松永 玲子
ちいちゃんが手にもて来たりリカちゃんは魔法にかけられ小さくなって  的場いく子
遠き日のナイスプレーの爽快感ふとよみがえり来るに驚く        吉田ヒロミ