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2021/12/01

2021(令和3年)12月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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2021年(令和3年)12月号

研究 細井平洲の巡村講話-古典の小径152- 加藤定彦      
尾上柴舟のうた 249 澤田久美子 上田勝博  山本光珠  
内面客観の道をたずね 山本康夫作品鑑賞 142      
                  石井恵美子 高本澄江 宮﨑孝司  近藤史郎
                  豊田敬子  森ひなこ  黒飛了子  佐藤静子 
【異文化essay】42 Tomorrow is another day.(明日という日もある)田中淳子 
[短歌時評]29「河北歌壇の顔」と呼ばれる人   上田勝博
佳品嘆美*159〈万葉集〉〈小島ゆかり〉山本光珠  森ひなこ 
作品評  大垰敦子  吉田ヒロミ 水野康幸  岡田寿子  大瀨 宏  月原芳子 
     濱本たつえ  
作品抄出 弘野礼子  柴村千織  井原弘美 
再録   真樹の曙―旧号抄録 174
真樹のうたびと 山本康夫 / 志田原茂子
他誌抄録 122
記   真樹サロン短歌会記 112 田中淳子 
    後記

山本康夫の歌
わが半折正面の壁に掲げあり目に見むとしてしたおそろしき
わが書ける文字のつたなさまざまざと見るにたへねば眼(まなこ)そむけぬ
劣等感堪ふるすべなみわが書よりそむけしまなこ再び向けず
                 『薫日』(昭和十二年刊)────全国書道展にて

20首抄(2021年11月号より抄出)
摘みきたるふきの葉につく蟬の殻(から)この蝉の声も聞きたるならん   廣田 怜子
過ちを許すも肝要と知りており心によする大波小波           松尾 美鈴 
直(じか)に見ること断念し検索し「揚州八怪」の画像に見入る      水田ヨシコ
武器のなき証しの握手ならずして肘(ひじ)にふれあうG7たちは      村上 山治
はつ夏の空にスケートリンクありしゅっと滑るは燕の夫婦        森 ひなこ
玄関に置きある埴輪は亡き夫の社会科授業に用いたるもの        森重 菊江
雨の日は画集を開きクリムトの黄金の中に心を浸す           新井 邦子
青蜥蜴(あおとかげ)ひとつうねうね見え隠れ草分けゆけばしたたるばかり 大瀬  宏
朝の道つゆ草のはな藍ふかくここは花野ぞ旧街道へ           折口 幸子
ながらえぬ森青蛙はオスプレイ飛ぶ街の隅の古寺の森にて        金子貴佐子
食べきれぬ西瓜望んで種とばし幼娘の壮大な夢             勝地 健一
やみに舞うほたるの恋のひとときよ地上に生(あ)るる星の世界よ      川口 浩子
遠き街の夜の点滅にんげんの領ならん空しずかなるかも         黒飛 了子
渋滞続く相手車線の運転手夕日を浴びて顔はいらだつ          小畑 宣之
雷長くとどろく窓の稲光に身をかたくして静まるを待つ         鈴木 敬子
水の神火の神祭る昭和初期炊事場浄(きよ)めし祖母の振る舞い      竹添田美子
茂みには野太き声して牛蛙がんと構えつ三尺の先            龍野日那子
何者の来るも拒まぬ青天にグレーのメガビルまたひとつ建つ       月原 芳子
世の中に起こる大禍を気にもせず季ごとの花は咲き盛るなり       富田美稚子
庭のプールの子らの顔ぶれ日替わりなり親の仕事によりてそろわず    延近 道江


2021/11/01

2021(令和3年)11月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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山本康夫の歌
火焔山人住むをこばみ風塵のなかの遺跡の種族らいずこ
風砂すさぶ莫高窟の奥深く限りなし仏教文化の遺跡
莫高窟の仏教聖地に書き遺す人の悲しき貌に魅かるる
地下深く整然と並ぶ俑群の表情なべ昏き何故
凶作のつづくを怒り切りしとか首なし石像果てしもあらず

      『山本康夫全歌集』(昭和六十三年刊)──天山・ゴビ幻想(テレビに見て) 

20首抄(2021年10月号より抄出)                                 
ばあばあーと幼き我の泣きさけびやまびこ聞こえし爺爺岳(ちゃちゃだけ)の裾   永井 妙子
この夏はバケーションの響き消え静かなお店で筆記具選び      西本 光仁
コロナ禍も灼 (しゃく)熱の季もものともせずオリンピックの開催決まる  平本 律枝
ホームにて不意にもらったストレスが五体をめぐりメガネがくもり来   松井嘉壽子
信じたる信じたる人の行いに辛き日すぐる憎みもできず         松尾 美鈴
土葬にて葬(はぶ)りたりける墓に見し桔梗の花に祖母の笑み見ゆ     宮﨑 孝司
「海の日」や「山の日」よりも「平和の日」をヒロシマ、ナガサキの原爆の日を 守光 則子
ドローンの光にかがやく地球生(あ)る東京五輪の始まる夜を       柳原 孝子
東京五輪 競泳ののちのテレビには父島の海の魚も泳ぐ         山本 真珠
東(ひんがし)へ南へ部屋をかえ夏は北の角部屋われを迎うる       山本 全子
見事なる真夏の桜を咲かせたりスノーボードの横住さくら        米田 勝恵
孵(かえ)さんと身じろぎもせぬ鳥の目に映る果てなき空と海原      上田 勝博
アンコールワットの朝日を見るために午前四時世界中から集う      宇吹 哲夫
寛解と医者に告げられ笑む夫に我の体の鉛とけゆく           榎並 幸子
オリンピック反対論多かりしかど活躍を見て広く湧きいん        大越由美子
冒頭のわずか五分のピクトグラム言語をこえて希望を繋(つな)      大垰 敦子
降り続く雨の音するひまひまに裏山よりをせみ鳴く声す         金尾 桂子
鞆の浦さよりは列なし潮風に身を遊ばすよ日がな一日          佐藤 静子



2021/09/29

2021(令和3年)10月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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2021年(令和3年)10月号

研究 芭蕉堂良大と香畦の手紙-古典の小径150- 加藤定彦      
尾上柴舟のうた 247 上田勝博  澤田久美子  山本光珠  
内面客観の道をたずねて 山本康夫作品鑑賞 140      
                  石井恵美子 高本澄江 宮﨑孝司  近藤史郎
                  豊田敬子  森ひなこ  吉田征子  佐藤静子 
【異文化essay】40 bed of roses(安泰な暮らし)田中淳子 
[短歌時評]28 現代短歌新聞「広島県の歌人」を読む 森ひなこ
佳品嘆美*157〈万葉集〉〈宮 柊二〉山本光珠  近藤史郎 
作品評  大垰敦子  吉田ヒロミ 山本光珠  岡田寿子  月原芳子  大瀨 宏 
     濱本たつえ 新井邦子 
作品抄出 弘野礼子  柴村千織  井原弘美 
再録   真樹の曙―旧号抄録 172
真樹のうたびと 山本康夫 / 津村富枝
他誌抄録 120
恵投書架
記    後記

ご案内 -2021年10月-
真樹サロン
   日時 10月22日(日)13時
   会場 真樹社               
   会費 500円(10時来会者は不要)
   出詠 1首を担当の新井邦子へ
   締切 10月15日


山本康夫の歌

熔岩をしつらへられし浴槽に熱きいで湯のあふれこぼるる
海潟の湯よりいづれば海はるか雨あがるらし波もきらひて
湯にほてる体さますとみんなみの海に向く窓みな開け放つ
旅にさへ選歌の稿を携へて追はるる思ひわが生(よ)に尽きず
携ふる歌稿の束を選びつぎ憩ふゆとりもなき旅終る

              『槙の実』(昭和二十八年刊)──昭和二十七年──桜島

20首抄(2021年9月号より抄出)
                                 
高齢者を優先となす接種はも儒教的なる弊と言わんか        滝沢 韶一
駅舎まで一直線の街路樹の楠を見渡す今朝の梅雨入り        竹添田美子
オルゴール過ぎ去りし日をノスタルジックにコロナコロナとうたう日は何時(いつ)   月原 芳子
過ぎし日の苦しきことを青空へ両手にかかえ放てきっぱり      津田 育恵
名作を残せる式部を思わんと石山寺にわれも詣でく         中村カヨ子
年とりて独り暮らしの通院は仕方のなきを医師はほめます      平本 律枝
休みいし練習始むと竪琴(たてごと)の弦の一本一本を撫(な)ず     弘野 礼子
老いたれば誰もが独り寂しさも誰もが抱けりこれぞ人の世      古澤 和子
庭先を八羽の子燕旋回す兄弟従兄弟ふざけあいにつつ        松尾 美鈴
過去のみは完全にわがものとなる明日のことなどケセラセラなり   森重 菊江
教室ののちなる会話はずみたりわれの記憶に歌友の名増ゆ      柳原 孝子
深紅なるジューサーに果実圧搾しはじめて飲みぬ七夕の夜      山本 真珠
小走りに雨の舗道を渡り来て飛び立ちにけりせきれい白き      石井恵美子
雨の日に塵(ごみ)出すわれへ傘をさし手伝いくれしゆきずりの人    岩本 淑子
危篤知り遠方からを駆けつけしに親子の再会許されぬとは      岡田 節子
電線に胸はりて声はずませる初燕 マラソンの勝者のごとく     岡田 寿子
コロナ禍のすき間に入れる美術館「鮭図」の前に女(おみな)寄りたり    金子貴佐子
梅雨の神の荒きすさびやこのゆうべざくろの花の朱をかき乱す    黒飛 了子
充実の形に百花つけし樹(き)がわがまどろみを侵しきらめく      近藤 史郎
お祭りも盆踊りもみな中止なり世は黙り人足早に行く        隅出志乃惠
2021/09/06

2021(令和3年)9月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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2021年(令和3年)9月号
研究 雲助志願者の日記から-古典の小径149- 加藤定彦 ・ 外村展子       
尾上柴舟のうた 246 福光譲二  岡田寿子  山本光珠  
内面客観の道をたずねて 山本康夫作品鑑賞 139      
                  大垰敦子  澤田久美子 村上山治  西本光仁                      
                  吉田ヒロミ 吉田征子  野坂昭雄  黒飛了子  
【近現代歌人の一首】41〔雨宮雅子〕近藤史郎
佳品嘆美*156〈万葉集〉〈佐伯裕子〉山本光珠 森ひなこ 
作品評   宮﨑孝司  月原芳子  山本光珠  滝沢韶一  大瀨 宏  高本澄江  
竹添田美子 大越由美子 新井邦子  上田勝博  弘野礼子
書評    岡田寿子  新井邦子
作品抄出  豊田敬子  山本全子  勝地健一
再録  真樹の曙―旧号抄録 171
真樹のうたびと 山本康夫 / 蒔田うめ
他誌抄録 119
記   真樹サロン短歌会記 110 村上山治       
    真樹誌上短歌大会ご案内
    後記

ご案内-2021年9月-
真樹サロン
   日時 9月26日(日)13時
   会場 真樹社               
   会費 500円(10時来会者は不要)
   出詠 1首を担当の新井邦子へ
   締切 9月15日

山本康夫の歌九月号
今朝がたより心覆ひてありし影つきつめみればたわいもあらぬ
かかる小さきことに心を責められてわがありたるはくやしきごとし
世に受くる衝撃はみな歌に詠み詠めば忘れてゆくぞおもしろ
はやりくる歌にはしまぬおぞ心われのまたまとひた守りつつ

               『麗雲』(昭和二十二年刊)──昭和十五年──たまたまに

20首抄(2021年8月号より抄出)
                                 
女二人いて「若緑がいいわね」と被爆柳に日傘をひきぬ       金子貴佐子
歩み来(こ)し幾星霜を省みて思い浮かぶは我陰の人         川口 浩子
ふつふつと湧く情念は明日知れぬコロナの渦に巻き込まれゆく    木村 浩子
柔らかに若葉青葉の山の色生きとし生けるものは輝く        小畑 宣之
今日よりを短歌習うはこの地ぞと心新たに降(お)りける明石     小巻由佳子
都会にて大病ストレスその果てに転地が効くと知人訪(と)い来ぬ   竹添田美子
雨に落ちし紅のバラ大皿に盛りて互いの痛み分け合う        田中 淳子
校内の柵より顏出すあじさいよ誰かとおしゃべりしたき表情     富田美稚子
白い花みどりの網目に伸びてゆく五月(さつき)の朝のジャスミン香る   西本 光仁
畑げしの茶の一本に新芽伸ぶ口つきてふと「夏も近づく」      廣田 怜子
父も祖父も年若くして堂々と大人としての相深くあり        古澤 和子
母のごと行く道正しある時は娘のように優し介護士         松井嘉壽子
鏡なす田は山の影映しいてその澄む水に稚苗並べり         松永 玲子
薬飲む作業をおえてベッドへと今夜ぐっすり朝まで寝ると      的場いく子
田植えなどしたこともなき乙(おと)の孫が田植え機に乗る写真届きぬ  守光 則子
ヘルパー欄に「昔話をよくされる」とメモありおのずと戦時に触るるを  有本 幸子
絵手紙を始めたわれにのしかかるやがて行わるる発表会の圧       宇吹 哲夫
時としてチクリとわれに主張せりアクリル製の水晶体は         榎並 幸子
紅梅の花のあかるさ鳥の声リハビリの道に心あたたむ          大津タカヱ
庭先に初団子虫現ると少年の顔で夫が告げたり             岡田 寿子


2021/07/28

2021(令和3年)8月号

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題字 尾上柴舟 表紙 武永槙雄「南無佛太子像」

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03072203_(2)目次8_convert_20210729091628

山本康夫の歌
親鸞聖人こもりましたる跡とありしんしんとして山気冷たし
わがみおやこもらしし庵に立ちきくや杉のこぬれを風通ふ音
昼暗き杉の木下の寺の屋根杉葉が散らふ音もきこゆる
かつかつと尾を引くごとくこだましてみ山の奥に木を伐れる音
老杉の根本に立ちてきき入れば鋸引く音もその奥どより
比叡の山深く入り来て佇むや鳴きかひしげし鳥のたぐひは
               『麗雲』(昭和二十二年刊)──比叡山(昭和二十一年作)

20首抄(2021年7月号より抄出)
海沿いのソーラーパネルに青鷺がチェスをするごと位置保ちおり   大越由美子        
道の辺に春の草花咲きみだれリハビリわれの心はずみぬ       大津タカヱ
風そよぐ古墳の丘に幼らと埴輪(はにわ)の馬のいななきを聴く     折口 幸子
被災地の定点観測十年(ととせ)経て今後もと言うカメラマンらは   川口 浩子
平凡な日常こそが幸せとどこまで知るぞソファなる犬は       菅  篂子
この星はコロナウイルスに侵さるれど花も咲きたり緑も芽ぶく    小巻由佳子
松手入れ庭師は一切私語を断ち松の心になりきり励む        廣本 貢一
木々眠るなかを咲きいる寒椿雪を食(は)みしに赤々として      近藤 松子
柴舟のこの世の影かと詠(うた)われしその意ようやく解かれたりけり 笹田四茂枝
好きなるを職業にする吾(あ)子ら見てさても我はと問いかけるなり  柴村 千織
きらきらと厚い葉の面輝けりさざんかの木が晴天告げる       隅出志乃惠
じいちゃんが赤ちゃん抱いて歩きおり寒い気にふれ大きくならん   高見 俊和
春秋に富める世代へワクチンを優先接種となすべきをいかに     滝沢 韶一
温(ぬく)き日に空を自在に飛ぶつばめ巣作りせわし春は光れり    豊田 敬子
空晴れて水の匂いを感じたり蛙の声がきこえくる今         延近 道江
神妙に花器と鋏(はさみ)を取りそろえ初弟子となり子の前に座す   濱本たつえ
昨夜見た夢の片鱗ふと浮かび思考のすべてを傾ける無駄       福光 譲二
この坂は我鍛えきぬ一歩ずつ白詰草に目守(まも)られ進む      松永 玲子
ちいちゃんが手にもて来たりリカちゃんは魔法にかけられ小さくなって  的場いく子
遠き日のナイスプレーの爽快感ふとよみがえり来るに驚く        吉田ヒロミ