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2022/12/05

2022(令和4年)12月号

R4・12①_convert_20221205203410
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
R4・12目次_convert_20221205204250
R4・12③_convert_20221205204559
R4・12②_convert_20221205203441

20首抄(2022年11月号より抄出)

うす紅のコスモス映ゆるカンバスは空の青さとかすかな風と   高本澄江
海が好き海の輝きわれのものときめく心白波に乗す            津田育恵
夕暮れをバイオリン聞こゆ原爆の日にゆかりある器を奏すらし     中谷美保子
新しき駐車場ひとつ雨の中祭りのごとく夜光を放つ  中元芙美子
しょぼしょぼと夏至の一日を降る雨よわが身の痛みにほど良き雨か  延近道江
いつ我もあの世へ行くや当然のことと思うもやはり寂しき  平本律枝
六本の脚でそろそろ進みおりわが手のひらを蟬飛び立たず  弘野礼子
老いし今はじめてを知ることばかり今日も勉強死ぬまで勉強  古澤和子
飛ばされし帽子は宙に舞いながら上下動して助け乞う如(ごと)  水田ヨシコ
わが人生夫と過ごして楽しかりき来世も一緒に苦楽をともに  村上幸江
親しげに何語れるや白さぎ二羽われ近づけば気づきて去れり  守光則子
青空に吸い込まれつつうぶ声は澄みたり蝉の出立の朝  吉田征子
ひと月の面会謝絶の解けし母焦点合わずうなずき見せず  宇吹哲夫
キラキラと夕陽(ひ)に映える街並みと電車の灯(あか)り台風一過  及川 敬
鮮やかにありしを褪(あ)する百日草力の限り生きし証しか  岡田節子
うす紅の笹百合の花は崩れ落つ花弁それぞれ雄しべを抱きて  岡田寿子
清方は踊りの所作を絵姿に けいこ帰りの乙女を捉う  川口浩子
雨予報聞きて畑にて二人して秋じゃが植えし空に虹生(あ)る  菅 篁子
満月にシルバーの我昇天し明日は琥珀(こはく)にとや叔母逝けり  栗林克行
肉に従(つ)く者なりければ夕べにはリラの香りをかなしみにけり  黒飛了子
2022/12/05

2022(令和4年)11月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
11 目次_convert_20221205194813
11_表2_convert_20221205194843
山本康夫の歌

あわただしく過ぎしここらの年月か心づかれのなしといはなくに
信じゐしかつてはわれの知らざりし心あらはに人のふるまふ
忙しき日日を暮せば持ちゐたる怒りもいつか忘れはてゐつ
反きゆく人にも心動かざるわれをふとしもさびしむ時あり
怒(いか)らざるわれをいぶかしとする人のあるひはあらむ心に笑(ゑ)まる
担担と常あるわれを冷たしと見む友の誰彼心にうかぶ

                 『薫日』(昭和五年刊)──自照篇──かへりみて

20首抄(2022年10月号より抄出)
 
新しき世界へ行くに若さにも資格にもまさる心意気こそ     柴村千織
夏帽に手をやりにつつパラソルの女にほほ笑む夫に似る人        高本澄江
半世紀ことば無き子との蜜月をなつかしむわれ息の不在に       滝沢韶一
あじさいの色あざやかなり静かさの漂う池にその瑠璃色は        田中淳子
周りにも劣らず稲は成長す水の管理の苦労も消ゆる            津田育恵
胸をうつサーロー節子氏国連にて「核兵器禁止」へ真心を込む      中谷美保子
偶然に隣に座せる縁により文を通わしし人の死届く             中村カヨ子
朝餉(げ)ののち「ホタルの宿」を大声で歌いしも明くる日を浄土へと  濱本たつえ
築山にひときわ高く鳴く蟬よぎらぎらの夏の光煽(あを)るがに       廣田怜子
川わたり愛を語ろう星二つ地上のコロナいかほどお知りか         松井嘉壽子
一人居の将来思おゆ頑張れる気力ある間に成果出したし         水田ヨシコ
梅雨の日の紫陽花の白のいとおしさ日本の路地の白貴重なり       村上幸江
ヒロシマの原爆記念日は明日にしてようこそこの世に生(あ)れこし曾孫 守光則子
母と来たるカフェモスに飲むソーダ水を透かせば緑濃き街の樹々(きぎ) 山本真珠
遠足に来し三滝寺変わりいず段(きだ)を数えて歌友と上る         新井邦子
ケイタイを見ながら歩く若人よ理知なき日本の未来の姿か         宇吹哲夫
検査キット提出をして結果待つ神の出番か不安と期待            大垰 敦子
床の中に五七五と紛らわすコロナワクチン副反応を             金尾桂子
親族らの写真の無きにこだわるや吾(あ)子はカメラを求めてやまず    木村浩子
小浅蜊を踏めばかすかな音たてぬ生を伝うる砂のうえの声         近藤史郎