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2022/10/05

2022(令和4年)10月号

2022・10表紙_convert_20221005085554
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
2022・10表2_convert_20221005085649
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山本康夫の歌

相とけぬ心さびしみてありしかば逢ひて睦める夢を見にけり
夢に逢へば人の憎みの解けゐるに心をどりてわれはありける
しみじみとやさしき言葉かけられて涙ぐみたるわれを夢に見き
夢ぬちは心と心反きあふ悲しき事実(こと)し絶えてなかりき
温情はやさしく燃えてあかときの小床すがしくめざめゐるなり
憎しみをかけられつつもつゆ霜の淡く解けゆくわれふがひなし

                   『薫日』(昭和五年刊)──自照篇──夢

20首抄(2022年9月号より抄出)

うす雲に見え隠れする有り明けよGPSと我が歩み守(も)る  金子貴佐子
一夜花、静かな森にピタッ、ピタッと雄しべは散りて水面流るる     川口浩子
終活と精いっぱいの挑戦とどちらが先かみずからに問う         菅 篁子
紫陽花の移ろえる色おだやかなり石段のぼり寺まいりせり       栗原美智子
木霊(こだま)まで浮かれ出そうな夜桜に闇の華やぐ丘となるなり    廣本貢一
沖を行く快速艇をライバルに尾道水道シーサイド走る          小畑宣之
うつし身の健やかにありうれしさよ今朝も万緑の影を踏みたり     鈴木敬子
発(た)ち位置の東に東に変わる月 幼に帰る宙のクエスチョン      月原芳子
原点で拾い忘れた宝石を朝の目覚めにふと思い出す          西本光仁
葉にすがる雨粒白く光りおり五月みそかの朝出てみれば        延近道江
わが前を歩くからすの足まねて小(ち)さくスキップ小雨ふる道      弘野礼子
ほそりゆく孤独の余生寒けれど歌を詠む時二人となりぬ        松井嘉壽子
梅雨空のもとずっと見ないかたつむり紫陽花の葉にみつけてうれし 村上幸江
こむら熱く当たり飛びゆく黒猫よわけのわからぬ命だ走れ       森 ひなこ
紡ぎ来し物語の秋編夢見んかチョコレート色の葉の落つる秋      山本真珠
石の上(え)にも三年と来てなお短歌未熟なれどもいよよ励まん     山本全子
戦場の映像見慣るるわが心いのちを軽く見はじめいぬか        吉田ヒロミ
ふうわりと飛び来し鳥は電柱の碍子(がいし)にまぎれ動くともなし    有本幸子
赤レンガ庁舎の庭にそびえたつしだれかつらよ池の面に揺る     榎並幸子
コロナ下をムラ社会へと帰島せりカープ観戦は内緒の話         大越由美子


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