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2024/02/13

2024(令和6年)3月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏

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     20首抄(2024年2月号より抄出)
リュック負い杖(つえ)つき足を引きずりて自(し)が糧求め男一人ゆく  原 佳風
伏しつつも図書返却の気になりてケイタイに見る図書番号を  水田ヨシコ
口の中水ぶくれ一つ犯人は「上海一家」の揚げたて春巻き  宮本京子
あの人にもこの人にも会えて集い合う今日の喜び「真樹」に幸あれ  柳原孝子
本意(ほい)ならず祖国を離れし人びとの悲傷の連鎖やむことあらじ  山辺洋子
邑南の水甘かるらし新米を食(は)みつつ舌にせせらぎおぼゆ  新井邦子
鮮やかな落ち葉を床に狸ひとつ毛並みすぐれてふくよかに死す  上田勝博
突然の自(し)が身にかかる不条理に臆することなく蓮池氏生く  大越由美子
留守中を溜(た)まりし仕事に対応し旅の余韻に浸る暇なき  岡田節子
残照にただよう夏の閉店は身の終焉とママは語れり  勝地健一
曉闇(ぎょうあん)に赤子泣くかとすくむわれ茅(ちがや)のもとに子猫の目見ゆ  金子貴佐子
危機一髪夫婦げんかの妙薬か上の句で言えば下の句返る  栗林克行
わがおもい頭の中で交錯し満月の夜に身を浄化せり  黒飛了子
厳冬の山のいただきに立ちぬれば滑る決心迫りくるかな  椎野祐治  
今はみなおとろえ果つる姿なれどその背後に見る輝ける日々  隅出志乃惠
独り座し花火をみれば人恋し蒸し暑き風肌に絡めり  竹丸砂久湖
コロナ衰え翠巒(すいらん)のいろ紅葉し名に負う地には人らざわめく  龍野日那子
備中のレトロタウンよ吹屋道ベンガラ色に往時をしのぶ  田中淳子
先輩の歌友に励みをわがもらい「歌謡ひろしま」で幕閉じるなり  中谷美保子
湖畔から眺めし花火忘れえずともに見たりし君あらずして  中村カヨ子

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2023/11/03

2023(令和5年)11月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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20首抄(2023年10月号より抄出)

地(つち)に生き奏でるバッハ内声の中指の爪土の残れる        上田勝博
バンドを背にわが加われるコーラスは迫力ありて心に響く             及川 敬 
万華鏡の無限のかたちに憧れて魅せられながらのぞきこむとき  大垰敦子
旅に果てて印度更紗(さ)をまとうとき二重三重(ふたえみえ)なる闇ときめきぬ  大塚朋子
布ひとつ眺め眺めて夢描き裁断までの時はも長し   岡田節子
終点は北極星か「そらの北」行きのバス地上の横川を発(た)つ   岡田寿子
杉木立の下(もと)に群れいる赤水引蒼(あお)き海底に冴(さ)えいるごとし   金子貴佐子
梅雨晴れの朝(あした)の空を統ぶるごと鳶おほどかに旋回しをり   澤田久美子
母なるかはた父やもとこの朝(あした)また見つ白蝶庭を舞いゆく   鈴木敬子
像となり夜のしじまに波聞くや波と遊びていし砂たちは   高本澄江
館内のどこをG7の長は見し情報秘匿は権力の宝刀   滝沢韶一
ぽつねんとイタチはわれの真近にいて言葉かければ草垣に入る   龍野日那子
梅雨の鬱をふり払うがに大輪の朝顔盛るワインレッドに   月原芳子
散歩にと買いし麦わら帽かぶる白きリボンを夕日に見せて   中元芙美子
十数年の時経て咲ける春蘭よ卯の花の咲くもとに確かに   延近道江
夏草を引きぬく手止め聞き入りぬ微風のなかのかそけき虫の音(ね)   原 佳風
暗がりを背戸の木々はもざわめきて獣のごとき枝の動きよ   松尾美鈴
甘き香のライラック一枝偶然に友より受けぬわが誕生日   水田ヨシコ
パン粥(がゆ)を初めて口に運ぶ時娘と分かつかっての緊張  宮本京子
どの窓より見ても日本は青葉風 ゼレンスキー氏戦地へ帰る   森ひなこ

2023/07/07

2023(令和5年)7月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏

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20首抄(2023年6月号より抄出)

絶対の愛など無いと言う我を愛する妻の思いに涙す      茄子四季人
空中に浮遊している言の葉を脳に取り込みサクサク食べる   西本 光仁
一年目男(お)の子の看護師かいがいし言葉やさしく血管さがせり   松尾 美鈴
若き日に机を並べし仲間たち妻の仏前に顔をそろえぬ     村上 山治
ファッションショーに見るごとき衣(きぬ)を身につけて女性キャスターウクライナを言う   森重 菊江
この初夏はおくれて咲ける柘榴の花一輪 庭の白日の星    山本 真珠
見ませ、父。列車も車も走るさま 二十年(はたとせ)祝する瀬戸大橋に 吉田 征子
中海の冬日をちらしふかふかと鴨は内らに影持たぬごと    新井 邦子
こころの歌三十 (そ) 一文字に言葉込め生きいる今を抉(えぐ)り取り出す 杏野 なおみ
すずらんとクリスマスローズはひっそりと庭に咲きおり下しか向けずと  畔 美紀恵
春先に弥山ゆ眺むる瀬戸の海水脈(みお)ひく先の舟影(ふなかげ)ちさき  榎並 幸子
引き揚げの従妹に教えられし味麦焦がし汁を珈琲(コーヒー)とよびき   金子貴佐子 
募り来る戦世にありて亡き母の書きし字まざまざと我の脳裏に 木村 浩子
空さえて流星群に押さるがに一つひとつをこなしゆく日々   栗原美智子
籠が落ち驚き飛び出すオカメインコ上昇気流に乗りて消え行く 小畑 宣之
ふっくらした頬(ほ)は見る度に細りゆきゼレンスキー氏の苦が胸に来る  佐藤 静子
震災の苦渋くぐりし色白のきゃしゃとも見ゆるピッチャー強し    竹添田美子
新しき知のdoor(ドア)とはと自問セリ人影のなき図書館に座して 田中 淳子
コを上に付けて憎まんロシアの地ツンドラに春は来るのでしょうか  月原 芳子
花の下に友らと集うひと時をさくらの匂い総身にて受く    富田美稚子
2023/04/07

2023(令和5年)4月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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20首抄(2023年3月号より抄出)

かすかなる音に目凝らす本堂をルンバは回る「花まつり」のあさ  金子貴佐子
三十日(みそか)夜を居場所無き子は縁先で月のうさぎに餅をせがみし   木村 浩子
麻酔より醒(さ)めたる額の冷えのごと一枝にひとつろう梅咲けり  黒飛 了子
老いし人大声で携帯電話かく難聴者なればそれもやむなし     小畑 宣之
「忙中閑あり」とて自問自答するも夢はさめたり不燃焼のまま   竹添田美子 
静かなる龍頭の山に吸われんかここに響ける神楽の笛の音(ね)    龍野日那子
疫病(えやみ)して声もか細き君と並(な)みホワイトボードに花咲く時も   月原 芳子
夫の語る幼き別れの悲話ありて見(まみ)ゆることなく逝きにし義母 よ   中谷美保子
剪(せん)定し裸木となりもちの木はメルヘンめいて語りかけくる   濱本たつえ
霜ふかく寒々と光る白の野辺遠く焚(た)き火の煙漂う      廣田 玲子
宮人の好みし「あも」の芯は栗みどりの抹茶うすく泡だつ         松井嘉壽子
常宿はコロナ仕様に変わりても女将の笑顔と味は変わらず        宮本 京子
妻送る葬送の場に孫二人カノンを奏すバイオリンにて           村上 山治
「真樹」誌のアサギマダラに目を止むる時をわれ持つこの一年間      森重 菊江
三とせ振りにお出ましになる愛子さま気品はまさに皇女のものぞ      山本 全子
キャンパスにR・ケネディ、ガガーリン迎えし青春こころに褪(あ)せず  吉田 征子
にぎる手は昔に比べやわらかく寝たまま思う母は強しと          杏野なおみ
十月の風物詩なるサヨリ干し今年は見えず友も持て来ず          大越由美子
ただひとつ我は求むる君の歌、君の謦咳(けいがい)ここにみつるを     大瀨  宏
ひらひらと紅葉舞い落つその命の限りに人を慰むとごと          岡田 節子
2023/02/23

2023(令和5年)3月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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20首抄(2023年2月号より抄出)

真珠色の天王星が予知どおり月に入り行き月を出て行く  石井恵美子
夕方はピアノを弾きに甥が来るカップを温めレモンティーにせん  畦美紀恵
秋の昼ラフマニノフを聞きながらやわらかな陽(ひ)を公園に浴(あ)ぶ   及川 敬
大山(だいせん)を真向かいに見て父母眠る仏山にも今は登れず  大垰敦子
初日の出御魂(みたま)のように上るいま戦艦大和わが目に立てり  大塚朋子
荒れ畑に残る農家の夢の跡ぶどうの棚へ冬の雨降る  金尾桂子
名も知らぬ人の助けに命得し我を遣(つか)わせよ御(み)心ならば  栗林克行
わが夫(つま)の足にて事故にあいたるよ青虫ひとつ花壇にとむらう  栗原美智子
胸内にほのぼのひろがる学びやのタイムトンネル越えし風景  隅出志乃惠
重き荷は置きて帰れと君は言う冬日に温(ぬく)き丘の上(え)の墓碑  高本澄江
悠々とせせらぎを飛ぶ鬼やんま古里にわが感奮多し  龍野日那子
球根は生きつづくらし枯るるかと思うやすぐに伸びくるネリネ  富田美稚子
追いかけて追いかけて遊びし夏休み体ふうわりトンボのごとく  豊田敬子
寒き夜に星くず群れて流れると聞けば祈らんこの世の平和  中村カヨ子
雨つぶを葉の上(え)にのするスズランはもったりとした風に吹かるる  延近道江
歌生(あ)れず喘(あえ)げる我に頑張れと乙(おと)子はくれつ歌会用バッグ 濱本たつえ
家を売り子の住む東京へ行きし友今にほろほろ帰りたきとか  平本律枝
阿武山は秋となりつつ夕日受け薄紅に山肌映ゆる  村上山治
カラス除(よ)けのCDコツンと声をあげ明けのトマトを目覚めさせたり  森ひなこ
満月は今朝まだ天にかかりいて野を照らすなり午前六時半 守光則子