2023(令和5年)4月号
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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏



20首抄(2023年3月号より抄出)
かすかなる音に目凝らす本堂をルンバは回る「花まつり」のあさ 金子貴佐子
三十日(みそか)夜を居場所無き子は縁先で月のうさぎに餅をせがみし 木村 浩子
麻酔より醒(さ)めたる額の冷えのごと一枝にひとつろう梅咲けり 黒飛 了子
老いし人大声で携帯電話かく難聴者なればそれもやむなし 小畑 宣之
「忙中閑あり」とて自問自答するも夢はさめたり不燃焼のまま 竹添田美子
静かなる龍頭の山に吸われんかここに響ける神楽の笛の音(ね) 龍野日那子
疫病(えやみ)して声もか細き君と並(な)みホワイトボードに花咲く時も 月原 芳子
夫の語る幼き別れの悲話ありて見(まみ)ゆることなく逝きにし義母 よ 中谷美保子
剪(せん)定し裸木となりもちの木はメルヘンめいて語りかけくる 濱本たつえ
霜ふかく寒々と光る白の野辺遠く焚(た)き火の煙漂う 廣田 玲子
宮人の好みし「あも」の芯は栗みどりの抹茶うすく泡だつ 松井嘉壽子
常宿はコロナ仕様に変わりても女将の笑顔と味は変わらず 宮本 京子
妻送る葬送の場に孫二人カノンを奏すバイオリンにて 村上 山治
「真樹」誌のアサギマダラに目を止むる時をわれ持つこの一年間 森重 菊江
三とせ振りにお出ましになる愛子さま気品はまさに皇女のものぞ 山本 全子
キャンパスにR・ケネディ、ガガーリン迎えし青春こころに褪(あ)せず 吉田 征子
にぎる手は昔に比べやわらかく寝たまま思う母は強しと 杏野なおみ
十月の風物詩なるサヨリ干し今年は見えず友も持て来ず 大越由美子
ただひとつ我は求むる君の歌、君の謦咳(けいがい)ここにみつるを 大瀨 宏
ひらひらと紅葉舞い落つその命の限りに人を慰むとごと 岡田 節子
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