2023(令和5年)7月号

題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏




20首抄(2023年6月号より抄出)
絶対の愛など無いと言う我を愛する妻の思いに涙す 茄子四季人
空中に浮遊している言の葉を脳に取り込みサクサク食べる 西本 光仁
一年目男(お)の子の看護師かいがいし言葉やさしく血管さがせり 松尾 美鈴
若き日に机を並べし仲間たち妻の仏前に顔をそろえぬ 村上 山治
ファッションショーに見るごとき衣(きぬ)を身につけて女性キャスターウクライナを言う 森重 菊江
この初夏はおくれて咲ける柘榴の花一輪 庭の白日の星 山本 真珠
見ませ、父。列車も車も走るさま 二十年(はたとせ)祝する瀬戸大橋に 吉田 征子
中海の冬日をちらしふかふかと鴨は内らに影持たぬごと 新井 邦子
こころの歌三十 (そ) 一文字に言葉込め生きいる今を抉(えぐ)り取り出す 杏野 なおみ
すずらんとクリスマスローズはひっそりと庭に咲きおり下しか向けずと 畔 美紀恵
春先に弥山ゆ眺むる瀬戸の海水脈(みお)ひく先の舟影(ふなかげ)ちさき 榎並 幸子
引き揚げの従妹に教えられし味麦焦がし汁を珈琲(コーヒー)とよびき 金子貴佐子
募り来る戦世にありて亡き母の書きし字まざまざと我の脳裏に 木村 浩子
空さえて流星群に押さるがに一つひとつをこなしゆく日々 栗原美智子
籠が落ち驚き飛び出すオカメインコ上昇気流に乗りて消え行く 小畑 宣之
ふっくらした頬(ほ)は見る度に細りゆきゼレンスキー氏の苦が胸に来る 佐藤 静子
震災の苦渋くぐりし色白のきゃしゃとも見ゆるピッチャー強し 竹添田美子
新しき知のdoor(ドア)とはと自問セリ人影のなき図書館に座して 田中 淳子
コを上に付けて憎まんロシアの地ツンドラに春は来るのでしょうか 月原 芳子
花の下に友らと集うひと時をさくらの匂い総身にて受く 富田美稚子
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