FC2ブログ
2024/04/19

2023(令和6年)5月号

06042001_convert_20240419140714.jpg
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
06042004_convert_20240419141121.jpg
06042005_convert_20240419141839.jpg
06042003_convert_20240419142048.jpg
06042002_convert_20240419142627.jpg

20首抄(2024年4月号より抄出)

ストロベリー・チョコレートには精緻なる船彫られたり春暁の海  山本 真珠
暖かき大きな胸と手のぬくみ忘るることなし君なき今も  吉田ヒロミ
江田島が離島でなくなり五十年(いそとせ)と先人の苦労つぶきにしのぶ  大越由美子 
新築と同時に作りしこの庭の樹木の勢とともに歩みし  大垰 敦子
朝七時ルーチン終えてまず読書短歌入門のページをめくる  大西 博臣
そら豆を七厘(りん)にかけアワふかせ焦げ目にたらす醤(しょう)油一滴  勝地 健一
手のひらにこの悲しみを載せられるその日来るまで背負いてゆかん  金尾 桂子
箱型に紐(ひも)を巡らす電車ごっこバイバイとて行く先の蒼天  金子貴佐子
常のこと目覚めし我に子猫来て人の居ぬ間に交わす口づけ  木村 浩子
被害者の夫が被告をさん付けす「京アニ」の罪に心沈めり  栗原美智子
かがやきをまといて歩む幼子のつばさみえねど若葉はつはつ  黒飛 了子
初夢は若者集い未来図を語り合いたり戦なき世を  滝沢 韶一
頬かぶりの朝市のおばさん無事なりや輪島の旅をたどれり地震(ない)に  竹添田美子
愛すれどすれちがう愛ふつふつと耐えて花咲く山茶花なれや  竹丸砂久湖
白き朝気霜(きじも)に変わるわが息よ能登の朝市思いて歩く  田中 淳子
音もなく雪積もりいる夜明けにぞ春の遊びを思いて楽し  原 佳風
卒寿すぎ教師の衣脱ぎ切れず介護士の声や所作採点す  松井嘉壽子
覆いたるほうれん草は草の中ここよここよの葉先光れり  松尾 美鈴
被災地のニュースを見つめ献立の一つを減らし感謝して食ぶ  水田ヨシコ
歌心耕さんとてトランクに忍ばせる歌集二冊選びぬ  宮本 京子

2024/03/15

2023(令和6年)4月号

_1_convert_20240315140539
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
224目次1_convert_20240315131819
06031605244目次2_convert_20240315133013
06031606244うたびと_convert_20240315134645_convert_20240315135126


06031607224表紙2_convert_20240315133037
06031401観音_convert_20240315141355

20首抄(2024年4月号より抄出)

真夜さめて楽しかりしこと思い出(い)ず真っ赤な夕日に子らあそびしを  松尾 美鈴
戦乱のおさまらぬ世に怒りいる地球が処々に大寒波放つ  村上 山治
窓ゆ見るブルーの海よ新年号 瀬戸内レモンの歌に酔え蝶  森重 菊江
住所録に短歌の友のふえしこと賀状書きつつ心ほんのり  吉田ヒロミ
われとわが胸は言の葉交わしつつ三十一(みそひと)文字に生(あ)るるを待たん  吉田 征子
いつの日か姉の植えゆきし雪椿悲しみの花となりて寄らしむ  有本 幸子
禄剛埼の地変おぞまし青草のそよぐ丘辺ゆ断崖に立ちし  石井恵美子
アルプスの総鎮守なる穂高神社神々を祭る霊気著(しる)けく  榎並 幸子
YouTubeで「ジェットストリーム」を夜々流し仮想の旅を我は楽しむ  及川  敬
戦死せる義父の遺影はセピア色カラーの義母は卒寿過ぎ逝く  小畑 宣之
浮世絵のごとく影無き絵とすとぞゴッホ「ひまわり」わが国に咲く  川口 浩子
ま白なる中を夢見ていしょうに心地よくいま歌いおわりぬ  栗原美智子
何もかも捨てて悔いなきこの世とは言いつつもまた口ごもる我  栗林 克行
人々を赤々照らす大焚(た)き火太鼓が揺らす風が弾かす  高本 澄江
山津波の恐怖なお胸の底にあり泥にのまれし人見てしょり  竹添田美子
四十(そ)路ころ一越(ひとこし)の白地購(あがない)て染めし小紋に隠(こも)る月日よ  月原 芳子
病院にツリー飾りてのコンサート願いあまたもつ貴方(あなた)と我よ  豐田 敬子
公園の公孫樹の葉っぱが散り始め子守歌のごと地霊を治む  中元芙美子
名月を見よとや虫に誘われて山の上なる月を見上ぐる  延近 道江
「こんにちは」の声と同時にはや居間に来ていし友よ今は浄土へ  濱本たつえ


2024/02/13

2024(令和6年)3月号

20244表紙_convert_20240313230644
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏

2024・3目次_convert_20240213212828
320243表_convert_20240213212912
20243表2_正_convert_20240213212935

     20首抄(2024年2月号より抄出)
リュック負い杖(つえ)つき足を引きずりて自(し)が糧求め男一人ゆく  原 佳風
伏しつつも図書返却の気になりてケイタイに見る図書番号を  水田ヨシコ
口の中水ぶくれ一つ犯人は「上海一家」の揚げたて春巻き  宮本京子
あの人にもこの人にも会えて集い合う今日の喜び「真樹」に幸あれ  柳原孝子
本意(ほい)ならず祖国を離れし人びとの悲傷の連鎖やむことあらじ  山辺洋子
邑南の水甘かるらし新米を食(は)みつつ舌にせせらぎおぼゆ  新井邦子
鮮やかな落ち葉を床に狸ひとつ毛並みすぐれてふくよかに死す  上田勝博
突然の自(し)が身にかかる不条理に臆することなく蓮池氏生く  大越由美子
留守中を溜(た)まりし仕事に対応し旅の余韻に浸る暇なき  岡田節子
残照にただよう夏の閉店は身の終焉とママは語れり  勝地健一
曉闇(ぎょうあん)に赤子泣くかとすくむわれ茅(ちがや)のもとに子猫の目見ゆ  金子貴佐子
危機一髪夫婦げんかの妙薬か上の句で言えば下の句返る  栗林克行
わがおもい頭の中で交錯し満月の夜に身を浄化せり  黒飛了子
厳冬の山のいただきに立ちぬれば滑る決心迫りくるかな  椎野祐治  
今はみなおとろえ果つる姿なれどその背後に見る輝ける日々  隅出志乃惠
独り座し花火をみれば人恋し蒸し暑き風肌に絡めり  竹丸砂久湖
コロナ衰え翠巒(すいらん)のいろ紅葉し名に負う地には人らざわめく  龍野日那子
備中のレトロタウンよ吹屋道ベンガラ色に往時をしのぶ  田中淳子
先輩の歌友に励みをわがもらい「歌謡ひろしま」で幕閉じるなり  中谷美保子
湖畔から眺めし花火忘れえずともに見たりし君あらずして  中村カヨ子

2024・3後記1_convert_20240213230543
2024・3後記2_convert_20240213230631

2024/01/19

2024(令和6年)2月号

06011901表紙_convert_20240119140317
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏 
06011903目次左_convert_20240119140435
06011904目次右_convert_20240119140541
06011907佳品嘆美_convert_20240119140634
2024・2真樹の歌人_convert_20240127195909
06011902裏表紙_convert_20240119140655


06011905曙_convert_20240119141823
06011906曙裏_convert_20240119141847
2024・2後記_convert_20240125143329
     20首抄(2024年1月号より抄出)

だんだんと光と空が青くなる春の時間はゆっくり過ぎる  西本光仁
落ち込みし時は「真樹」誌選び読む気づけば真樹の泉に浸りぬ  水田ヨシコ
ふるさとへ六十分の空の旅雪の少ない富士をまたぎて  宮本京子
ひとたびは風を知りたる土塊(くれ)をマンション直下生き埋めにする  森 ひなこ
十五夜を君いずこにて眺むるや秘めし想(おも)いをうさぎに語る  山辺洋子
北上川の放射冷却ゆえという霧みつつ飲む熱きコーヒー  山本真珠
朝焼けは素足となりてわが向かわんアポロンの神の光あふるる  新井邦子 
阿武山に朝日の照れば紅葉映ゆ五彩の色にかがやく肌え 石井恵美子
仕方ない何とかなると言いながら心静めて仏間に座る  畦 美紀恵
松の木に精は宿るか去り難く「松に習え」の芭蕉を思う  大越由美子
酔芙蓉咲けば娘のごとくなり白よピンクよひかり輝く  大西博臣
繁茂する庭の足もと整うれば清風抜けて花も生き生き  岡田節子
戦禍の子の声なき声も詠み込んで世界に伝えん大和心で  栗林克行
聞くことに徹せんとしてあめ玉を共にほおばり相談を受く  栗原美智子
がむしゃらに仕事追いゆく顔捨てて幾日か良妻賢母の顔たり  黒飛了子
枠なしに過ごしたき日をきめられた三十一文字(みそひともじ)とう美形にはまる  佐藤静子
旱夏(ひでり)踊るホースに妻しゃぐ光る水玉潤おう樹々(きぎ)よ  椎野祐治
ただいまと待つ人の無き家に告げ五人家族の幻は見ゆ  隅出志乃惠
人の世に質草として拉致さるる民の哀れに心痛めり  滝沢 韶一
文明の十字路見んとプラン立つれど円安続き夢は遠のく 田中淳子

2023/12/20

2024(令和6年)1月号

2014・1表紙_convert_20231220094806
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
a20241目次右_convert_20231220095828
a20241目次左_convert_20231220100424
a20241表3_convert_20231220100344
a20241表2_convert_20231220100449
 
  20首抄(2023年12月号より抄出)

友逝きて夕べの散歩その方に入道雲が入り日をおおう  高見俊和
聖書講読と短歌作りはわが支えその深遠さ未到の道よ  滝沢韶一
オリーブの緑の木の葉は守るごと丸き実あまた風と育てぬ  中元芙美子
厚切りのトースト注文モーニング午前10時の香り確かめ  西本光仁
立ち止まり過ぎに過ぎたる時思うあれこれ背負いなお急ぐ身の  原 佳風
年月の早く過ぐるを語りつつ彼岸の中日父のみ墓へ  廣田怜子
空の上(え)で元気でいるかと骨つぼに耳当ててみる猫の命日  弘野礼子
薬効で痛みやわらぎ思考へと展(ひろ)がりてゆくベッドの中で  松井嘉壽子
子はわれにあまた助言し念を押しお盆にまたと靴べら置きぬ  水田ヨシコ
コレクション見終えて駅に向かう道坂道続く東京の道  宮本京子
蜩(かなかな)よきみより先に逝きし人の歌をまたもや口ずさみしよ  森 ひなこ
中秋の名月 満月と重なれり月かげさやけくふりそそぐ街  柳原孝子
お互いの心の中に秘しおかれよ人目にさらさば汚き不倫  吉田ヒロミ
灸(きゅう)据うる母の背中の百草(もぐさ)の火幼きナイトのごと見守りき  吉田征子
朝起きて始めの一歩は短歌詠むそれが満たされ心落ち着く  杏野なおみ
帰省子は台風の行方気にしつつ月光仮面のごと戻りゆく  大越由美子
同窓会で近況報告述ぶるわれ悔いあらずやと問う視線受く  岡田寿子
散りそむるわが魂のこの痛み風に飛ばせよ病棟の桜  勝地健一
リズムよくかわいた木の音(ね)ひびきおりキツツキいるや静(しず)宮の杜(もり)  栗原美智子
燔(はん)肉を捧げるすべもなき身なれ真昼落ち葉を焚(た)く火に寄れり  黒飛了子

2023/12/01

2023(令和5年)12月号

a202312表紙_convert_20231201095520
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
a202312目次_convert_20231201100018
a202312表3_convert_20231201100255
a202312表2_convert_20231201100524

     20首抄(2023年12月号より抄出)

遮光器をまとう土偶の愛らしき目線の先の暮らし生きづく   勝地健一
板の間にそうめん瓜ぬくもれりまだまだ暑き夏の夕暮れ    金尾桂子
黒き梁遺(はりのこ)せる蔵の女(おみな)出す春色だんごで休めとぞいう  金子貴佐子
旅の途にモネがキャンバスを立てて描きし奇岩にくだけるこの波のさま  川口浩子
仕事終えキャベツ抱える友の手の指輪の跡はすでに消えおり  木村浩子
七夕を明日に控えて思ひ出すシャガールの空に浮かぶ二人を   澤田久美子
去年(こぞ)逝きし佳人しのびて文箱に眠る筆跡また読み返す   竹添田美子
下駄箱に亡き夫の靴いまもなお艶保ちおり捨てられぬ奇怪  龍野日那子
料理とは言えぬものでも二人して食(は)めば笑みつつおいしさを言う  富田美稚子
子ツバメに虫やる親は朝早く順番たがわずわき目もふらず   豐田敬子
テレビ消し黙して食べる夕食にあかりを灯(とも)す虫の鳴き声   西本光仁
気が触れし人のじぐざぐ行く影よ秋風吹いて濃く薄く揺る   原 佳風
緑道の朝あおむけに蟬逝けり何一つ此(こ)をおくるものなく   村上山治
死者送り空をあふげば天空のわがメトロノームの振り子早まる   森 ひなこ
ため息をもらさんほどの喜びも悲しみもなくひと日すぎたり  森重菊江
風入れの風に覚めゆくわが生家いかにしなさん父母はたちつつ   吉田征子
海行かばの曲にはじまるラジオにて同胞たおれし記憶は消えず   石井恵美子
朝(あした)からいちずに鳴く蟬あちこちに過疎の田舎のにぎやかな夏   畦 美紀恵
江戸の世のもの移築せし「長多喜」は外国人の宣(うべ)し的とぞ   榎並幸子
人という「もの思う生」を宿したる天体ひとつ悲しかるらん   大瀬 宏
2023/11/03

2023(令和5年)11月号

202311表紙1_convert_20231103205908_convert_20231103210653
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
202311目次_convert_20231103210110
202311表3_convert_20231103210258
202311表2_convert_20231103210220

20首抄(2023年10月号より抄出)

地(つち)に生き奏でるバッハ内声の中指の爪土の残れる        上田勝博
バンドを背にわが加われるコーラスは迫力ありて心に響く             及川 敬 
万華鏡の無限のかたちに憧れて魅せられながらのぞきこむとき  大垰敦子
旅に果てて印度更紗(さ)をまとうとき二重三重(ふたえみえ)なる闇ときめきぬ  大塚朋子
布ひとつ眺め眺めて夢描き裁断までの時はも長し   岡田節子
終点は北極星か「そらの北」行きのバス地上の横川を発(た)つ   岡田寿子
杉木立の下(もと)に群れいる赤水引蒼(あお)き海底に冴(さ)えいるごとし   金子貴佐子
梅雨晴れの朝(あした)の空を統ぶるごと鳶おほどかに旋回しをり   澤田久美子
母なるかはた父やもとこの朝(あした)また見つ白蝶庭を舞いゆく   鈴木敬子
像となり夜のしじまに波聞くや波と遊びていし砂たちは   高本澄江
館内のどこをG7の長は見し情報秘匿は権力の宝刀   滝沢韶一
ぽつねんとイタチはわれの真近にいて言葉かければ草垣に入る   龍野日那子
梅雨の鬱をふり払うがに大輪の朝顔盛るワインレッドに   月原芳子
散歩にと買いし麦わら帽かぶる白きリボンを夕日に見せて   中元芙美子
十数年の時経て咲ける春蘭よ卯の花の咲くもとに確かに   延近道江
夏草を引きぬく手止め聞き入りぬ微風のなかのかそけき虫の音(ね)   原 佳風
暗がりを背戸の木々はもざわめきて獣のごとき枝の動きよ   松尾美鈴
甘き香のライラック一枝偶然に友より受けぬわが誕生日   水田ヨシコ
パン粥(がゆ)を初めて口に運ぶ時娘と分かつかっての緊張  宮本京子
どの窓より見ても日本は青葉風 ゼレンスキー氏戦地へ帰る   森ひなこ

2023/10/06

2023(令和5年)10月号

2023・10表紙_convert_20231006203343
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
2023・10目次_convert_20231006202706
2023・10表3_convert_20231006202732
2023・10表2_convert_20231006202757

20首抄(2023年9月号より抄出)

三十分止まりし市電の中にてもサミットの無事を希(ねが)いし市民   柳原 孝子
夜は青に点(とも)すdiffuser香らする精油に母の里の杉みゆ   山本 真珠
満開の花を見上げて我知らずほほえみいるをまたほほえめり    吉田ヒロミ
青嵐忌思い伝えん歌友らへ両手に庭の千草を摘めり   新井 邦子
核ボタンたずさえ動く人もあり疑心暗鬼の人の世悲し    石井恵美子
最後までの自宅介護を貫けず投げ入れられた浮き輪をつかむ    大垰 敦子
かなわねば足の指にて綴(つづ)りこし我が青春のあまたの歌よ    木村 浩子
ゆく方のひとつ嘆きや伝書鳩ひかりをひきて現(うつつ)を截(き)らん    黒飛 了子
今を生きる我らの幸を守らんとまなざし注ぐ空仰ぎ見る   隅出志乃惠
溝掃除長ぐつはいて鋤簾(じょれん)にて掬(すく)えば小亀冬眠中か   高見 俊和
在天の神ははるばる空駆けて命の基届くるならん   滝沢 韶一
内面の祖父の葛藤知る我に寄り添い訪(と)いくる肉親の愛   竹添田美子
五感のうち消滅なきは臭覚のみいよよ野生の生きみたまかな   月原 芳子
呼び出し音十五数えつつ耳澄ますひざ病む姉の受話器とるまで   豊田 敬子
諸用あり来客多き日常の今朝しとしとと春雨(しゅんう)の恵み   中谷美保子
赤色が似合うと言ってくれし歌友 そのワンピースを衣替えせり   中村カヨ子
春耕のトラクターの音あちこちに始動させたる農夫みな老ゆ   廣田 怜子
泰然と構えて今日も阿武山は夕日のなかに我と向き合う   村上 山治
あまりにもバラ美(は)しければこの中にとけ込めずいるわれを知りたり  森重 菊江
この暑気のなか朝夕を夫による野菜の手入れありて感謝す       守光 則子
2023/09/03

2023(令和5年)9月号

R5・9表紙_convert_20230903094714
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
R5・9目次_convert_20230903094847
R5・9表3_convert_20230903094806
R5・9表2_convert_20230903094912
   
  20首抄(2023年8月号より抄出)

夜上がりの雨滴のこして道までを伸びるツタカズラよけつつ歩く  松井嘉壽子
カーテンゆ透けて見えたる満月のおぼろおぼろに早苗田てらす   松尾 美鈴
葉桜に耳欹(そばだ)ててさえずりのありかを探しゆく並木道   水田ヨシコ
黒い雨の健康被害知る由なくブラウスの洗濯に心くだきし   柳原 孝子
この沖を人磨行きしと思いつつ息深く吸う藤江浜の辺   吉田ヒロミ
「幸せ」と見上げる空が美しくただただ、それが幸せ曜日   杏野なおみ
晴天にキラキラ光る新緑は風にまかせてそよそよと揺る   畦 美紀恵
新しく土を作ると鍬(くわ)入れつつ良き汗流し春を待つなり   及川  敬
貧困はいずれにありや「物もたぬ」「心を持たぬ」いずれにありや   大瀨  宏
「断捨離」をわれは宣言せるものを花談義ののち一鉢受けつ   岡田 節子
今日だけは誰にも告げじ百合の木の初花の黄の揺るるをながむ   金尾 桂子
いい人生だったと思う今のまま後期高齢者として歩まん   栗原美智子
肉体に花咲きし日をたたえなん蜂の唸(うな)りのまつわるときに   黒飛 了子
寒のもどり重ね着するもトネリコにひよどり群れ来やはり春は春   佐藤 静子
しづけさの生まるる朝よ雨過ぎし楢の林に滴光れり   澤田久美子
孤独にも様々な色あるならん赤きジャッケット今日は着て出(い)ず  田中 淳子
訃の届き連絡せざりしことを悔ゆ影をしのべば青嵐吹く   中村カヨ子
ヘリが飛ぶ警備のさなか主婦として毛布を洗い日の恵み受く   中元芙美子
催花雨をうけて生きかえる鉢の花独り眺めて飽かぬ思いす   延近 道江
パソコンの画面を離れわれの目は壁を這(は)いいる蜘蛛に和らぐ  弘野 礼子