2023(令和6年)4月号
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
20首抄(2024年4月号より抄出)
真夜さめて楽しかりしこと思い出(い)ず真っ赤な夕日に子らあそびしを 松尾 美鈴
戦乱のおさまらぬ世に怒りいる地球が処々に大寒波放つ 村上 山治
窓ゆ見るブルーの海よ新年号 瀬戸内レモンの歌に酔え蝶 森重 菊江
住所録に短歌の友のふえしこと賀状書きつつ心ほんのり 吉田ヒロミ
われとわが胸は言の葉交わしつつ三十一(みそひと)文字に生(あ)るるを待たん 吉田 征子
いつの日か姉の植えゆきし雪椿悲しみの花となりて寄らしむ 有本 幸子
禄剛埼の地変おぞまし青草のそよぐ丘辺ゆ断崖に立ちし 石井恵美子
アルプスの総鎮守なる穂高神社神々を祭る霊気著(しる)けく 榎並 幸子
YouTubeで「ジェットストリーム」を夜々流し仮想の旅を我は楽しむ 及川 敬
戦死せる義父の遺影はセピア色カラーの義母は卒寿過ぎ逝く 小畑 宣之
浮世絵のごとく影無き絵とすとぞゴッホ「ひまわり」わが国に咲く 川口 浩子
ま白なる中を夢見ていしょうに心地よくいま歌いおわりぬ 栗原美智子
何もかも捨てて悔いなきこの世とは言いつつもまた口ごもる我 栗林 克行
人々を赤々照らす大焚(た)き火太鼓が揺らす風が弾かす 高本 澄江
山津波の恐怖なお胸の底にあり泥にのまれし人見てしょり 竹添田美子
四十(そ)路ころ一越(ひとこし)の白地購(あがない)て染めし小紋に隠(こも)る月日よ 月原 芳子
病院にツリー飾りてのコンサート願いあまたもつ貴方(あなた)と我よ 豐田 敬子
公園の公孫樹の葉っぱが散り始め子守歌のごと地霊を治む 中元芙美子
名月を見よとや虫に誘われて山の上なる月を見上ぐる 延近 道江
「こんにちは」の声と同時にはや居間に来ていし友よ今は浄土へ 濱本たつえ