FC2ブログ
2022/02/24

2022(令和4年)3月号

2022・3表紙_convert_20220224104643
題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
2022・3裏表紙_convert_20220224104720

2022・3目次_convert_20220224105647

山本康夫の歌

つれだち町ゆく子供よろこぶも手にあまる旗を両手に持ちて
午過ぎて街しづもりつたかだかと物うりの声の部屋にひゞくも
赤き芽をはつはつふきし鉢の楓ひかりの中におきてわが見る
芽をふきし鉢の楓は日のあたるところに出していつくしみたし
一本の若木の楓ひさかたのひかりの中に葉をひろげたり

        『萱原』(昭和五年刊)──大正十五年──春愁篇──お太子様の日に

20首抄(2022年2月号より抄出)
                                 
ささくれて棘(とげ)持つバラ科のハマナスは寒風の中我をはげます 勝地健一
嵐去りて萩にさわりはなかりけり花待ちて見る買い物帰り  川口浩子
紫紺ふかき巨砲を食(は)めば口中にしばし備前へ戻す秋風  近藤史郎
待つことの辛さを言えばなおさらに縁薄くなるこの人もまた  木村浩子
萩の花にシジミ蝶一つ訪(と)いきたり時を静かに刻みて遊ぶ  佐藤静子
思ひ出が独り歩きす 山畑に真白き蕎麦の花揺れてゐむ  澤田久美子
とりどりの衣装と舞いと和して閉ずパラリンピックは道を示して  柴村千織
寒々と帰りてエアコン急ぎつけご先祖さまのいます気のする  隅出志乃惠
寝椅子にはマジシャンのいてひとときを無意識界に寝落としの術 月原芳子
信条は論語の中の「恕(じょ)」とぞ言うその祖父を継ぐ中村哲氏  中村カヨ子
自分史は生きし証しぞ読む人は笑わんも身をいとしとおぼゆ  延近道江
外を歩く我につき来てあまゆるは猫好きなるが伝わりいるか  平本律枝
数滴の愛酒ふふめど眠られず今日の子悪を自(し)が手で裁く   松井嘉壽子
翼状針刺さるることに慣れし猫黙って我らに背を向けており  宮本京子
褐(かつ)ふかき分身地上に這 (は) はせつつひまはり夏のをはりをまとふ 森ひなこ
母もわれも^抒情短詩^書く異邦人^LE MADRIGAL^に座せしパリの夜 山本真珠
ままごとの髪に飾りし花八手 記憶の花の今朝まっ盛り  米田勝恵
河畔走るライトとろとろつながりて帰心乗すれどただに動かず   石井恵美子
公言をすることにより身をしばり継続をして力となせり  宇吹哲夫
欲も減りぬ贈りて喜ぶ友あればあれもこれもと手放せる我   岡田節子