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2021/06/25

2021(令和3年)7月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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2021年(令和3年)7月号
研究 
鴉山坊の教え-古典の小径147- 加藤定彦       
尾上柴舟のうた 244       岡田寿子  福光譲二  山本光珠  
内面客観の道をたずねて 山本康夫作品鑑賞 137      
                  大垰敦子  澤田久美子 村上山治  西本光仁                      
                  吉田ヒロミ 吉田征子  野坂昭雄  黒飛了子  
【異文化essay】39 ISS国際宇宙ステーション  田中淳子 
佳品嘆美*154〈万葉集〉〈岡井 隆〉山本光珠  近藤史郎
作品評   宮﨑孝司  月原芳子  山本光珠  石井恵美子 大瀨 宏  高本澄江     
      新井邦子  竹添田美子 上田勝博  濱本たつえ 弘野礼子  大越由美子 
作品抄出  豊田敬子  山本全子  勝地健一
再録  真樹の曙―旧号抄録 169
    真樹のうたびと 山本康夫/和田長一 
    他誌抄録 117
記   真樹サロン短歌会記 108 上田勝博       
    後記

ご案内 -2021年7月-
真樹サロン
   日時 7月25日(日)13時             
   会場 真樹社               
   会費 500円(10時来会者は不要)
   出詠 1首を担当の上田勝博へ
   締切 7月15日

山本康夫の歌
たひらぎの心ねがひて眠れどもおもひみなぎり夜夜深くさむ
淡淡と余生たのしむ日は遠くむほん果てなき荒き息づき
静かなる余生を待てば身のうちにめぐりて熱き血をうとみそむ
いつの日に断ち得む執(しふ)かかきみだしみなぎるものを嘆く幾たび
己をば責めつつ或は人間のうるほひとも思ふこの執着よ
老いづけば老の境(さかひ)のありときく清しき老のその境ほる
                  『朝心抄』(昭和二十三年刊)───朝の電線

20首抄(2021年6月号より抄出)
もう十分生かされしわれワクチンの評判ききて予約ためらう     山本 全子        
宍道湖のもやおしわけて現るる船隊のあり粛々と鴨         新井 邦子
見あぐればひとつひとつがプテラノドン青き空ゆく白き翼に     大瀬  宏
どんぐりの二本の大木倒されて涙のかたちの花さかずなる      大垰 敦子
雨の道ひとり訪(と)いゆく亡き友へ最初で最後の花束持ちて      金尾 桂子
真円の橙色の太陽が赤信号の真横に並ぶ              小畑 宣之
海恋うや天の涙は川に落ち水の名を借り雲を映せり         近藤 松子
ほぐれつつ奔馬のごとき雲がゆく 春の野さして走りつづけよ    澤田久美子
ここで夢語るここから走り出すアンの姿に胸躍る旅         柴村 千織
濁りなき朝の光を留(とど)めいん桜さくらの坂を登りぬ        鈴木 敬子
夫ありて子らふざけ合う春ありて今残る身に姫りんご咲く      高本 澄江
大木の椿いよいよ盛りつつたんとあじわう今日も形見を       龍野日那子
異国なる城の収まる「スノードーム」まわしてblueの気分を飛ばす   田中 淳子  
雨よ降れ弥生の芽吹きにそっと降れみなぎる今はそを放たんに       津田 郁恵
ガラス戸に激突せしやこの真鶸冷たくなるを墓地におさめぬ     永井 妙子
歌詠みて言葉の深き不思議さを幾重にも知り歌誌めくるなり     中谷美保子
黄緑の帽子が春の空に合う五人と保母と信号を待つ         中元芙美子
なめらかに細き秒針一周すうつろに目覚め一日はじまる       松尾 美鈴
猪(しし)掘りて食べ散らかしし筍(たけのこ)の地中にありし春の黄の色  宮崎 孝司
ため息を幾度かつきて日が暮れる想像もなく創造もなし       森重 菊江
2021/05/28

2021(令和3年)6月号

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題字 尾上柴舟  表紙 大瀨 宏
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2021年(令和3年)6月号
研究 
詩人広瀬旭荘の遊歴(下)-古典の小径146- 加藤定彦 ・ 外村展子      
尾上柴舟のうた 243       上田勝博  澤田久美子 山本光珠  
内面客観の道をたずねて 136   小巻由佳子 高本澄江 宮﨑孝司  近藤史郎
                  豊田敬子  森ひなこ  勝地健一  佐藤静子 
【異文化essay】38 Japon(ハポン)さん    田中淳子 
佳品嘆美*153〈万葉集〉〈紀貫之〉 山本光珠  近藤史郎

作品評   大垰敦子  吉田ヒロミ 月原芳子  大瀨 宏  水野康幸  岡田寿子  
書評    岡田寿子  新井邦子
作品抄出  弘野礼子  柴村千織  井原弘美  菅 篁子                   
再録  真樹の曙―旧号抄録 168
    真樹のうたびと 山本康夫 / 大谷多香子 
    他誌抄録 116
記   真樹サロン短歌会記 107 新井邦子       
    私の一首          滝沢韶一
    後記
ご案内 -2021年6月-
真樹サロン
   日時 6月27日(日)10時~ 協力          
                13~15時 歌会
   会場 真樹社                
   会費 500円(10時来会者は不要)
   出詠 1首を担当者上田勝博へ(SMS可)
   締切 6月15日


山本康夫の歌
学生ら辻に売りゐしそこばくの品片づくる雨となる街
しのびやかにタンゴ洩れゐる窓の外歩みとどめて立つ暗き中
荒む世を潤すごとくバスガール発車合図す涼しき声に
働きてをとめはやさしバスの中鏡を出して顔見ることも
片手なき君もたつきを立つるとてもまれつつゆく人込の中
不自由の身を追ひ立てて働けるきみにしばらく痛むわが胸

                    『朝心抄』(昭和二十三年刊)

20首抄(2021年5月号より抄出)
仏壇の瓔珞(ようらく)壊れ畏(かしこ)みて師走の町に仏具店訪(と)う   宮崎 孝司
修道院の暮らしも難く老人ホームに三とせを世話になり妹は      守光 則子
イギリスのWEDGWOOD(ウエッジウッド)のブランドの薄きBLUE
は春の西空                            山本 真珠
馬立(うまたて)の川沿いに険し参勤道 土佐武士(もののふ)の外様の誇り  吉田 征子
籠もり居のわれの怠惰を呼び覚ますつぶてのような友の便りよ     米田 勝恵
初孫の命名なして逝きし夫嫁ぎゆく日に思い馳(は)せしや       有本 幸子
時じくの春雪降れり五階なる病室のベランダを訪(と)い来雪の子    石井恵美子
夕烏地に預くるかものの骨草に忍ばせ草かけて発(た)つ        上田 勝博
わが内に在(ま)すとう鬼は数匹か「鬼滅の刃」を読み終えて思う    大越由美子
冬の夜の手花火見たり降る雪をまとい嵯峨菊うつろに咲けり      勝地 健一
肌のうちにあふるる太陽あるごとく黒人メンバーかがよい走る     近藤 史郎
雪垂りを待つはヒヨドリ南天の赤き実のぞくその一瞬を        澤田久美子
凍る夜にふとよみがえる手の温(ぬく)み記憶の底の君に驚く       柴村 千織
庭の辺のメダカの宿の薄ら氷(ひ)を解かして春へと光ひとすじ      鈴木 敬子
できること一つずつ減る中にてもまだ力ある少しをよろこぶ      隅出志乃惠
散歩する道辺に梅の芽があまた ほのかなぬくみもらいて進む     高見 俊和
畑すみに霜焼け色の葉を広げタンポポは今春へ助走す         高本 澄江
冬枯れの少しく遠き野の道を亡夫の墓へと日はやわらかく       津田 育恵
はや春の陽気をのせて澄みわたる罪なき青空こころを染むる      富田美稚子
イルミネイトの色寒々しきその窓の内の明かきに円(まど)居思わる   福光 譲二
2021/05/01

2021(令和3年)5月号

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題字 尾上柴舟  表紙 大瀨 宏
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2021年(令和3年)5月号

題詠「ブルー・blue」 選・田中淳子
研究  詩人広瀬旭荘の遊歴(中)- 古典の小径145 ― 加藤定彦 ・ 外村展子
    尾上柴舟のうた 242     福光譲二  岡田寿子  山本光珠  
    内面客観の道をたずねて 135 大垰敦子  澤田久美子 村上山治  西本光仁
                    吉田ヒロミ 吉田征子  野坂昭雄  黒飛了子  
    近現代歌人の一首〔大西民子〕  近藤史郎 
    佳品嘆美*152〈万葉集〉〈齋藤 史〉    山本光珠  月原芳子
作品評      宮﨑孝司  月原芳子  山本光珠  滝沢韶一  大瀨  宏  高本澄江  新井邦子  
        大越由美子 上田勝博  弘野礼子
作品抄出    豊田敬子  山本全子  勝地健一
再録  真樹の曙―旧号抄録 167                 
    真樹のうたびと  山本康夫 / 池永秀夫 
    他誌抄録 115
記   真樹サロン短歌会記 106  村上山治       
    後記

ご案内 -2021年5月-
青嵐忌歌会
   日時 5月23日(日)11時半 法要―昼食―短歌会          
   会場  三滝ライオンズ山荘
   会費 1500円(昼食代込)            
   出詠 1首を担当者 上田勝博へ(SMS可)
   締切 5月15日

山本康夫の歌
開け放つ電車の窓より入る風のあおりに耐えて新刊書読む
夜深く汽車ゆく余響変りしは鉄橋上にかかりたる音
たくましき婦女の一団乗りこみて朝の車内に魚臭まきゆく
埃湧くごとくブトの群立ち舞いて曇り重たく夕べ暮れゆく
満潮の河口の芥片よりて夕照る街の家並をうつす
原爆禁止叫ぶときさえ敗戦の民のひくつなるものつきまとう

         『広島新象』(昭和三十四年刊)――昭和二十九年――山光まぶし 

20首抄(2021年4月号より抄出)

蠟梅の花びら透かし昇る陽(ひ)にくちびる寄せば香り立ちくる     畠山 清子
ゴミ出しは人目をさけて深々と帽子かぶればスナフキンなる      濱本たつえ
こずえより螺旋(らせん)を描き舞い舞える落ち葉のダンス背戸庭につづく  廣田 怜子
バスを待つわれの睫毛(まつげ)にとまる雪しばし世界がかがやいて見ゆ   弘野 礼子
日を数え一人で待ちし十三夜城跡の峰にいま欠けず浮く        松井嘉壽子 
欠詠のなき一年(ひととせ)の褒美とてわがためワイン選(え)りてあがなう  水田ヨシコ
今朝得たる皇帝ダリアの花びらを合同歌集の我のページに       村上 山治
夜泣き封じを願いしこともはるかにて息子は定年の春を迎うる     米田 勝恵
相見れば抱きしめほめてやるものを入試の洗礼受けたる孫よ      榎並 幸子
「気を付けてね」「行ってくるよ」とけさもまた玄関先で小さな儀式   廣本 貢一
宿雨去り土手の桜も開花せりゆるる川面に影を落として        近藤 松子
箱根駅伝青春の文字浮かびくる海見え富士見え茅ヶ崎あたり      佐藤 静子
あと五年生きて研究遂げたしと若き兄逝く冬の病室          柴村 千織
拡大する世を映像が現出し多様な歌材提示しやまぬ          滝沢 韶一
カマキリの卵ある木の根元をば枯れ葉で覆う雨雪を避(よ)くと      永井 妙子
核の傘返上できない哀(かな)しさよ平和希求の願いふたたび       中谷美保子
わが血にも混じりておらん亡者の血壇ノ浦から聞こゆる嘆き       中村カヨ子
永き世も山坂ありてこの日まで生ある我にひと筋の道          鍋谷 朝子
地は地層を木は年輪を積み重ね私はなにを積めばいいのか       西本 光仁  

2021/04/04

2021(令和3年)4月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏

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2021年(令和3年)4月号
研究  詩人広瀬旭荘の遊歴(上)-古典の小径144― 加藤定彦 ・ 外村展子
    尾上柴舟のうた 241      澤田久美子 上田勝博  山本光珠  
    内面客観の道をたずねて 134  高本澄江 宮﨑孝司  月原芳子  近藤史郎
                     豊田敬子  龍野日那子 勝地健一  佐藤静子                     
    【異文化essay】37 sea vegetables(海藻) 田中淳子 
    佳品嘆美*151〈万葉集〉〈結城哀草果〉    山本光珠  宮﨑孝司
作品評      宮﨑孝司  月原芳子  山本光珠  石井恵美子 大垰敦子  吉田ヒロミ
         水野康幸  岡田寿子  大瀨 宏  米田勝恵  新井邦子
作品抄出     弘野礼子  柴村千織  井原弘美
再録  真樹の曙―旧号抄録 166               
    真樹のうたびと  山本康夫/橋本武子 
    他誌抄録 114
記   真樹サロン短歌会記 105 田中淳子       
    後記

ご案内 -2021年4月-
真樹サロン
   日時 4月25日(日)10時~ 協力          
                13~15時 歌会
   会費 500円(10時来会者は不要)            
   出詠 1首を担当者吉田征子へ(SMS可)
   締切 4月15日


山本康夫の歌
春風のそよそよ通う木下道松の花粉の見えて散り来る
田の水のくさりてたまる一ところかたまりて黒しおたまじゃくしのとも
通りゆくわが足音にうようよとおよぎいだせりおたまじゃくしのとも
日の透る溝の底ひにうようよとむつみあひをりおたまじゃくしのとも
溝ふかく透す日射しに自が影とまぎれてうごくおたまじゃくしのとも
春の水ゆたににごりてよどみゐる溝に目高子ここだ生れぬ

            『薫日』(昭和十二年刊)――季節篇――春――近郊     
                                  
      20首抄(2021年3月号より抄出)
                                  
冬の朝はるかに鳴らす汽笛あり期末テストは遠き幻          中元芙美子
窓よりの遠き山脈うるおえば心静かに年改まる            鍋谷 朝子
色づける銀杏の葉くわえ落としつぐ雀を見れば楽しきごとし      平本 律枝
鉄筆とガラスの面のかすかなる摩擦の音は絵に溶くるごと       水田ヨシコ
まだ乗れる自転車までも廃車にせり前へ進むは自らの脚        村上 山治
後ろめたい事はしないと言い聞かす自分が作る自分なるゆえ      吉田ヒロミ
遠き日に志士ら駆けゆく足音を風も聞きしか土佐北街道        吉田 征子
明けやらずオリオン仰ぐひとりなる我に拾えと流星は墜(お)つ      新井 邦子
山の端(は)にどっしり座る黒雲を暁光ひとすじこじ開けんとす     上田 勝博
生前の夫の施し時を経て今ひとり身のわれに注がる          岡田 節子
顏よりも大き香茸われ待てり落ち葉を分けて息をすいこむ       岡田 寿子
子供たちの作品詰めるダンボール廃棄の朝は手に触れて見る      折口 幸子
リモートの画面の母は手を伸ばしわが抱く猫をなでようとする     金尾 桂子
一天をつらぬく鵙のこえ絶えてひと谷の昼締まりくるなり       黒飛 了子
夕暮れに川沿い走るテールランプつつが無く任務終えて急ぐや     佐藤 静子
ヒロシマの記憶に生(あ)るるやさしさは共助なりしと奏者は語る     滝沢 韶一
目の前の黄なる葉どものほろほろと夕べ落つるにたたずめるあり    龍野日那子
西風(にし)凪(な)げば肥後は火の国たちまちに白い旅人地上に消える  月原 芳子
凍(い)て星に今日のひとみを感謝して玄関内に花の鉢納む        津田 育恵
霜の朝ブロッコリーに触れたれば受験生のごとピリリとしまる      豊田 敬子
2021/02/22

2021(令和3年)3月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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2021年(令和3年)3月号
研究  記紀の歌枕と国学の徒-古典の小径143―   外村展子
尾上柴舟のうた 240       福光譲二  岡田寿子  山本光珠  
    内面客観の道をたずねて 134   大垰敦子  澤田久美子 村上山治 西本光仁
                    吉田ヒロミ 吉田征子  野坂昭雄 黒飛了子                     
    近現代歌人の一首〔上田三四二〕 近藤史郎
    【異文化essay】36 California roll(カリフォルニアロール)    田中淳子 
    佳品嘆美*150〈万葉集〉〈石川不二子〉   山本光珠  澤田久美子
作品評
再録  真樹の曙―旧号抄録 165
    山本康夫のノートより   
    真樹のうたびと  山本康夫/泉 覺性 
    他誌抄録 113
記   真樹サロン短歌会記 104 福光譲二       
    後記

ご案内 -2021年3月-
真樹サロン
   日時 3月28日(日)10時~  協力
               13~15時 歌会
(歌会だけの参加も歓迎)
   会費 500円(10時来会者は不要)
・通信参加は1000円
   出詠 1首を担当者吉田征子SMS可)
   締切 3月15日

山本康夫の歌
狐毛に鹿毛狸毛馬の毛と筆になすべく皮のまま買ふ
竹の管ころよきを選(よ)り束にして庇にとどくほども積みおく
刈りし毛はよき毛あしき毛と選りわけてそのよき毛もてよき筆作る
命毛の先はするどく腰強く諸毛あはせて玉の穂とする
揃ひたる諸毛さばきつ切れし毛や逆毛抜き去り指にまろむる
           『薫日』(昭和十二年刊)――人生篇――筆作り

      20首抄(2021年2月号より抄出)
                                  
渓流の辺の魔崖仏見落としぬ女人高野へ至る細道           竹添田美子
秋晴れの気のさわやかさ心までおだしく柿を食(は)む午後3時      富田美稚子
歌友らの言の葉われの頑(かたく)なな心を融(と)かし闇を照らせり    中村カヨ子
子供らの成長するを見られずて歩みし年月心に残る           難波 雪枝
しらじらと外明るめば灯を消して暗き中にて来し方おもう        延近 道江
天気雨秋の陽(ひ)を受け降りいるを窓あけて見る誕生日の朝       弘野 礼子
神々しさを覚えるほどの美しき初に扇雀見し日を覚ゆ          古澤 和子
「杵(きね)つきの餅」のチラシは君の村柔和な君はいかに暮らすや    宮崎 孝司
広島の地方議員に金の蔓(つる)伸びて絡みて一気に絞める        森 ひなこ
言論の自由無き戦後をしのばせて「ひめばなし」とぞ繰り返さるる    柳原 孝子
ブランコを漕(こ)ぐたび冬の太陽の縁(ふち)はまわれり白金王冠      山本 真珠
空澄みて真白き雲もにぎわえり思い思いのGoTo秋の旅        吉田 征子
情島にて釣りし友よりもらいたる鯛いきいきと冷蔵庫に映ゆ       岩本 淑子
幼子が「父(とう)さん」と呼びかけておりよきかな「パパ」の時代は終われ  宇吹 哲夫
時は大正 鬼殺隊員「炭治郎」一コマごとに迫力を増す         大垰 敦子
あたたかき情熱そそぎ短歌道教えたまいし師の恩深し          大津タカヱ
旧街道に忘れられいるみちしるべなぞりなぞりて古き字読めず        折口 幸子
障害児の育てし花は金盞花(きんせんか)土に根をはり陽(ひ)に向かいて咲く   勝地 健一
なじみなき文字に悩みつつ時惜しみLineに向かうわが性(さが)悲し    木村 浩子
山の端が残照に染みて一瞬の輝き去りて別世界となる            隅出志乃惠