2022(令和4年)4月号

題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏


山本康夫の歌
戦争記事日毎読みつつ黒人のもてる素朴さは親しみおぼゆ
槍もちて無雑作に立てる黒人の精悍なる目付はしたに敬う
近代科学の武器をふかくも憎しむは未開国エチオピアをわが思ふらし
殺戮して国奪ひあふ人類の無惨さは太古の世よりありにき
何千といふ人一瞬に死にてゆく戦争絶ゆる世はも来らず
群衆に爆弾投ぜりといふ記事は小さき見出しつきて載(の)りたる
『薫日』(昭和十二年刊)──祖国篇──伊エ交戦
20首抄(2022年3月号より抄出)
記事を読みわからぬ言葉調べつつふとこんな日を幸せと思う 佐藤静子
六甲の森に日米欧集いしがん研究の熱き闘い 滝沢韶一
献身的医師をたよりし患者らの犠牲多かり未来断たるる 竹添田美子
左右なしのまま七年が過ぎており夫なきわが身三省(さんせい)の日々 龍野日那子
タンポポの綿毛は小(ち)さきシャンデリア夕日にかざし異国を思う 田中淳子
ハナ、ハトと学び始めてよ 九十代誌友のみちびくtomorrow-road 月原芳子
障子あけ夜空仰ぎて就寝前すべての人らのしあわせを祈(ね)ぐ 富田美稚子
真樹社へ今日はハープとともに行く感謝をこめて音届けんと 弘野礼子
山際に日が沈むなり人の世を日すがら照らし見守りし後 村上山治
大海に還(かえ)るとは死を説かるれどわが自意識はうべなわざりき 吉田ヒロミ
ながれゆくものに感じてわれの身にながるるものと和し歌いたし 上田勝博
正月はテレビのウイーンフィル聴きてリズムを取れば身も軽くなる 畦 美紀恵
気配りの年末年始すぎさりて我のからだがひゅうひゅうと鳴る 榎並幸子
温かい指導賜りし短歌道九十歳われの宝となりぬ 大津タカヱ
裏山の深山につづく猪(しし)道あり三和土(みたき)のごとくかたまりており 折口幸子
もう鳴らぬ生家の電話番号をただ眺めおりスマホ画面に 金尾桂子
さす光浴びてほころぶ梅の花天守にささぐる春とおからず 菅 篁子
宇宙をば見ていただけのわれなれどプライドを捨てて歌よまんとす 栗原美智子
明日より昼間が少し長くなるコロナ禍の世にささやかな幸 小畑宣之
こまやかに木々を整え園丁はよき小春日を広げゆくなり 廣本 貢一
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