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2018/11/01

2018年11月号「前号20首抄」

 20首抄(2018年10月号より抄出)ー
  
   災害の諸相ひどきに言葉なく断水ほどはと気を引きしめつ         脇家登美子
   貝を掘り子らの泳ぎしかの海にがれきとなりて町流れ落つ         有本 幸子
 学会号にわれらも追いし抄録みて閉じし心のキー揺らぎおり        有本 保文
 二日経て山水まだもさんさんとあふれ下りつ裾なる家に          石井恵美子
 夏朝明()(もや)ぞ立ちたる瀬戸内の居並ぶ島々断水中なり      上脇 立哉
 土曜もなく日曜もなく給水所へもらいにゆくは命の水ぞ          大越由美子
 泥につかる家内の惨のむごきこと天のなすことはけ口もなし        川上  薫
 ステントの交換上手をよろこべば医師は何よりと笑顏美し         後藤 祝江
 奪われし心はここに戻らずと残る空(うつ)ろののたうつばかり       下井  護
 諦めと忍従の色みせつつも復旧作業に君は殉ぜり             滝沢 韶一
 鉄道も幹線道路も土石流に埋まり呉市は孤島となりぬ           竹添田美子
 地図になき茨(いばら)の道を歩みたりこの災害に新たなる道        田中 淳子
 轟音たて水煙上ぐる堰(せき)となりまぶた閉ずれば大滝うかぶ       中村  武
 雨の神魔の爪持ちて荒れまくり山々の肌を引っかき去りぬ         濱本たつえ
 消磨され不滅の光放つとう墨の命に心す墨匠(しょう)           古澤 和子
 土色に濁れる今朝の海一面木切れ漂う雨の夜あけて            堀部みどり
 島の端の友より届く井戸水をこぼさぬように夕餉()のしたく       松井嘉壽子
 夕立に生き返りたるナスキュウリ災害地には傷深まらん          松尾 美鈴
 山の斜面崩し豪雨は流れつつ家屋家財の散乱むごし            松永 玲子
 わが庭に柩(ひつぎ)のあるや漂ふはクルスのごときドクダミの花      森 ひなこ

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