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2018/08/28

2018年9月号「前号20首抄」

20首抄(2018年8月号より抄出)ー
 天そばを食してのちに汽笛鳴る少し昔の糸崎駅は             樋口  礎
 きのこ雲を見し夏来たり吟じたし世界へ届け原爆のうた          藤河賀久清
 ころんだり落ちたり滑ったりの者ばかり受験生には禁忌の病室       守光 則子
 亡き母と亡き妹がたずね来る夢におどろくうたたねの午後         山野井 香
 手を伸べば花の小枝に触れるかや魔のささぬうち列車よ出(い)でよ     吉山 法子
 満開の桜に丸き月かかりたれもふわりと羽衣まとう            新井 邦子
 就活に出(い)で行く孫を見送れるわが白髪を映すミラーは         有本 幸子
 津女津中共学となれば同窓よ兼英先生名簿に後輩             石井恵美子
 亡き夫が買いてくれにし夏帽子形崩れず三十三年             岩本 淑子
 燕らよ戻り来たれるこの国の空の匂いは去年のままか           上脇 立哉
 あまたなるおのが障害気にしても仕方なければ気楽さ求む         大森  勝
 赤き舌わずかにのぞかせ石楠花は風のぬくさを確かめている        岡田 寿子
 ちょっとしたほころびいつまで繕えぬまなじり上ぐる母の夢見る      川上  薫
 世の人の知り得ぬ努力積まれけん今わが前に光る名作           川口 浩子
 撩(れう)乱の色を鼓舞してチューリップ園に人らの笑顔が歩く       廣本 貢一
 けさ生(あ)れし蝶るりいろの羽ひそと楓の若き葉に息づけり        澤田久美子 
 見上ぐれば空旋回すきのうまで我が庭にいし鳩にあらずや         竹添田美子
 紅(あか)もみじのはざ間にみゆる雲の海見上ぐるわれに朝鳥の鳴く     龍野日那子
 ガラス戸に笹の葉ゆれるかげ映り午後の薄日にあらき風見ゆ        豊田 敬子
 山吹の花びらひとつ散れるを見ひとつ年ます春をば待ちぬ         永井 妙子
 
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