2018年9月号「前号20首抄」
ー20首抄(2018年8月号より抄出)ー
天そばを食してのちに汽笛鳴る少し昔の糸崎駅は 樋口 礎
きのこ雲を見し夏来たり吟じたし世界へ届け原爆のうた 藤河賀久清
ころんだり落ちたり滑ったりの者ばかり受験生には禁忌の病室 守光 則子
亡き母と亡き妹がたずね来る夢におどろくうたたねの午後 山野井 香
手を伸べば花の小枝に触れるかや魔のささぬうち列車よ出(い)でよ 吉山 法子
満開の桜に丸き月かかりたれもふわりと羽衣まとう 新井 邦子
就活に出(い)で行く孫を見送れるわが白髪を映すミラーは 有本 幸子
津女津中共学となれば同窓よ兼英先生名簿に後輩 石井恵美子
亡き夫が買いてくれにし夏帽子形崩れず三十三年 岩本 淑子
燕らよ戻り来たれるこの国の空の匂いは去年のままか 上脇 立哉
あまたなるおのが障害気にしても仕方なければ気楽さ求む 大森 勝
赤き舌わずかにのぞかせ石楠花は風のぬくさを確かめている 岡田 寿子
ちょっとしたほころびいつまで繕えぬまなじり上ぐる母の夢見る 川上 薫
世の人の知り得ぬ努力積まれけん今わが前に光る名作 川口 浩子
撩(れう)乱の色を鼓舞してチューリップ園に人らの笑顔が歩く 廣本 貢一
けさ生(あ)れし蝶るりいろの羽ひそと楓の若き葉に息づけり 澤田久美子
見上ぐれば空旋回すきのうまで我が庭にいし鳩にあらずや 竹添田美子
紅(あか)もみじのはざ間にみゆる雲の海見上ぐるわれに朝鳥の鳴く 龍野日那子
ガラス戸に笹の葉ゆれるかげ映り午後の薄日にあらき風見ゆ 豊田 敬子
山吹の花びらひとつ散れるを見ひとつ年ます春をば待ちぬ 永井 妙子
天そばを食してのちに汽笛鳴る少し昔の糸崎駅は 樋口 礎
きのこ雲を見し夏来たり吟じたし世界へ届け原爆のうた 藤河賀久清
ころんだり落ちたり滑ったりの者ばかり受験生には禁忌の病室 守光 則子
亡き母と亡き妹がたずね来る夢におどろくうたたねの午後 山野井 香
手を伸べば花の小枝に触れるかや魔のささぬうち列車よ出(い)でよ 吉山 法子
満開の桜に丸き月かかりたれもふわりと羽衣まとう 新井 邦子
就活に出(い)で行く孫を見送れるわが白髪を映すミラーは 有本 幸子
津女津中共学となれば同窓よ兼英先生名簿に後輩 石井恵美子
亡き夫が買いてくれにし夏帽子形崩れず三十三年 岩本 淑子
燕らよ戻り来たれるこの国の空の匂いは去年のままか 上脇 立哉
あまたなるおのが障害気にしても仕方なければ気楽さ求む 大森 勝
赤き舌わずかにのぞかせ石楠花は風のぬくさを確かめている 岡田 寿子
ちょっとしたほころびいつまで繕えぬまなじり上ぐる母の夢見る 川上 薫
世の人の知り得ぬ努力積まれけん今わが前に光る名作 川口 浩子
撩(れう)乱の色を鼓舞してチューリップ園に人らの笑顔が歩く 廣本 貢一
けさ生(あ)れし蝶るりいろの羽ひそと楓の若き葉に息づけり 澤田久美子
見上ぐれば空旋回すきのうまで我が庭にいし鳩にあらずや 竹添田美子
紅(あか)もみじのはざ間にみゆる雲の海見上ぐるわれに朝鳥の鳴く 龍野日那子
ガラス戸に笹の葉ゆれるかげ映り午後の薄日にあらき風見ゆ 豊田 敬子
山吹の花びらひとつ散れるを見ひとつ年ます春をば待ちぬ 永井 妙子
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