2023(令和5年)2月号

題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏



20首抄(2023年1月号より抄出)
ひと駅を歩きつつ仰ぐ秋の空いちょう並木をゴールに決めて 宮本京子
生をこの齢(よわい)まできて世にあるは意味ありや外(と)に出(い)でて息吸う 森重菊江
移り行く四季の変化を織り交ぜて人の息吹を伝うる屏風絵 柳原孝子
あまたたび来たり泊まりし<錦パレス> 時刻も詠みし星空消えず 山本真珠
わけありと値引きのナスを手に取れば台風みやげの葉擦れの跡あり 山本全子
今も残る握られし手のぬくもりよ愛せし思いいよいよ深し 吉田ヒロミ
極まれば残忍となる人間をまざまざ見つつ手立てを持たず 有本幸子
木暗がりに一弁一弁ほぐしゆく黄の花びらよつわぶきの花 石井恵美子
染まり初(そ)め見る見る紅潮きわまりて情念うねる秋の夕空 上田勝博
学校へ通うつもりで暮らしおり老いの身ながら日々図書館へ 宇吹哲夫
胸詰まる診察待ちの長き間を「真樹」の中に我を置きたり 榎並幸子
新米の炊きあがりたるその時に花山葵のあるを天与というか 大塚朋子
ノコンギクの紫揺れてみつばちの羽輝けり風渡るまま 金尾桂子
一点の悔いなくて経る人ありや折り合い付けて達観したし 菅 篁子
わけもなく離れ久しき人思う部屋の片隅かすかな音に 栗林克行
邯鄲は身をふるわせていま鳴きつ 午前一時の時かがやきぬ 近藤史郎
子と来たりスマホとカードさえあれば自在に過ごせる今様の旅 佐藤静子
若者に付いて行くのは無理という脳にあらがい芝生は優し 津田育恵
下を向きころばぬように石塊(くれ)の歌を詠むのも晩年の華 月原芳子
この世界広げているかひらがなよ漢字当てたら遠くへ飛んだ 西本光仁
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