FC2ブログ
2018/07/18

2018年8月号「前号20首抄」

 20首抄(2018年7月号より抄出)ー

   うららかな弥生の空の鶯の声に天なる母を感ぜり             中尾 廸子
 春うらら島に隠るる犯人と千二百人の警察官と              中元芙美子
 雨にぬるる紫陽花の濃き紫の目にしむ今朝の冷たき風よ          難波 雪枝
 春たちて嵐吹きあれ草木みな潤(うる)う命の芽ぞ張りにける        日野 幸吉
 気高くもかわゆき小由女人形の花はこまかき筆に成りたり         平本 律枝
 花祭りにぎわえるらし農繁期われは鍬(くわ)もて春愁をはらう       廣田 怜子
 これまさに「鬼手仏心」と心しむ緑風のなか歩いておりぬ         古澤 和子
 日と月と向かい合う間の大木は数多(あまた)の鳥の夢乗せ暮れつ      松尾 郁子
 雪の道わが足跡を残しゆく音さくさくとしじまを揺らす          村上 山治
 あのドームに誓ひし言葉忘れゆき憧れて見るセントエルモの火       森 ひなこ
 慈しみわれを育てし家族あり短歌詠むたびなつかしさ湧く         森  光枝
 ひかれゆく若者の恐ろしき表情よおのが心が刻みしものか         吉田ヒロミ
 筆太の兜太の大書「許さない」遺墨となりて夏を迎える          油野はつ枝
 金鳳花その身の毒を知るやいなや道行く人に愛敬(きょう)ふりまく     岡畑 文香
 風強まり木(こ)の葉裏見せ表見す裏見する風しずまりてほし        喜多 敏子
 花壇見るひまなくおればこぼれ種の千鳥草はも青強く咲く         幸本 信子
 河出書房「定價六拾圓」蕗のとうの装丁あせず啄木歌集          後藤 祝江
 病む足にもかなう天気と街中の小さき園に独りの花見           小巻由佳子
 自然石の粗き面(おもて)に刻みたる「天離(さか)る」の歌柴舟の筆     近藤 史郎
 しまいいし亡夫の時計のねじ巻くも共有の時永遠(とわ)にもどらず     近藤 松子
 
関連記事

コメント

非公開コメント