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2022/01/27

2022(令和4年)2月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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山本康夫の歌

山々に雪がまばらに消え残り照り透る日の光冷たし
仏書のほかは興のらぬころあこがれし出離解脱の境遠き日々
世間虚仮唯物是真の幅かかる部屋に明け暮れてなお我執あり
脈うてる命のひびき聞くばかり澄みゆく夜半をむさぼりて読む
気がかりの原稿二篇成りし夜はいねがたきまで心はずめり
文学を語りて帰る雨の街心にあふるるものきわみなく

          『広島新象』(昭和三十四年刊)──昭和二十八年──壊滅の記憶

20首抄(2022年1月号より抄出)
                             
金魚の子生(あ)れて小(ち)さきは尾をゆらしウインクするかその円(つぶ)らな目 新井邦子       
よみがえる楽しみの一つ古里の彦山神社の秋の祭典 大津タカヱ
セミ穴に問いかけおれば風わたり砂は僅かに境内を這(は)う 金子貴佐子 
LEDに照る二の丸のヤマモミジ幻想のかなた能の舞あり 菅篁子
大理石の白きを踏めば脳髄にのぼりきたれり結晶世界 黒飛了子
屋根越えて行く白雲よ西方の友に便りをたのむと願う 小巻由佳子
山の端(は)を染めて夕日が沈むころ今日なさざりしことにこだはる 澤田久美子
清らなる歌声流れ中秋の月従えて姫路城立つ 柴村千織
「海の日」に散歩をせんとドア開けつ空一面が茜(あかね)に映える 高見俊和
いく千とせの宮(みや)居(い)の香りに馴染(なじ)まれし眞子さま嫁ぐ果敢な人へ 龍野日那子
朝露の落ち葉ふみふみ自転車の行く先いつもの友のやさしき 津田育惠
餅つく兎(う)をはるかに仰ぐ秋の夜半虫の音のみがしじまに響く 中村カヨ子 
遺影にと選びし写真の五十代は見知らぬ人とひ孫思わん 濱本たつえ
逆転のやむなく主夫は漫(すずろ)わし主婦の繁忙際限なきに 福島克巳
腹の出た男見るたび片足をそろりと浮かせ悪あがきする 福光譲二
片隅に押しとどめたる思い出を時にはそっと開いて楽しむ 古澤和子
日盛りの光は強くうらうらと赤瓦秋の日にゆるるごと 松永玲子
眠りいし晶子の扇子携えて短歌の門を再びたたく 宮本京子
お迎えの彼がいること内緒よと秘密つくりて孫は車中へ 山本全子
紙とペンと歌心とを友としてベッドのわれは世界の中心 吉田征子


2022/01/06

2022(令和4年)1月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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2022年(令和4年)1月号

真樹誌上短歌大会
真樹賞 森ひなこ / 康夫賞 森重菊江 / 年度賞 小巻由佳子・川口浩子 
真樹賞・康夫賞・年度賞受賞者競詠

研究 平洲の講話と鷹山の藩政改革-古典の小径153-    加藤定彦       
尾上柴舟のうた 250 福光譲二  岡田寿子  山本光珠  
内面客観の道をたずねて 山本康夫作品鑑賞 143      
                  大垰敦子  澤田久美子 村上山治  西本光仁                      
                  吉田ヒロミ 吉田征子  野坂昭雄  佐藤静子  
【近現代歌人の一首】〔源陽子〕近藤史郎
佳品嘆美*160〈万葉集〉〈北原白秋〉山本光珠  澤田久美子 
作品評   宮﨑孝司  月原芳子  山本光珠  滝沢韶一  大瀨 宏  高本澄江  
大越由美子 新井邦子  上田勝博  竹添田美子 弘野礼子
書評    新井邦子  岡田寿子  森ひなこ
作品抄出  豊田敬子  山本全子  金子貴佐子
再録  真樹の曙―旧号抄録 175
真樹のうたびと 山本康夫 / 村上正名
他誌抄録 123
記   令和三年掲載歌数集計表
真樹サロン短歌会記 113 弘野礼子       
    後記

ご案内 -2022年1月-
真樹サロン
   日時 1月21日(日)13時
   会場 真樹社               
   会費 500円(10時来会者は不要)
   出詠 1首を担当の新井邦子へ
   締切 1月15日


山本康夫の歌
引き潮の刻ぞこの時幻の街の井戸枠たしかに見たり
街ありし芦田川洲の原ひろら鳥の群が草に降りいて
石垣は運河のあとか小舟など入りくるが見ゆ幻なして
千軒の庶民の街を土深く覆う河原に吹く秋の風
遠き日の町の哀歓も土深く秘めてしらじらとなびく芦の穂
街家のかまどの跡か発掘の原ひとところ土の黒ずむ

             『樹の遠景』(昭和五十四年刊)──草戸千軒町跡

20首抄(2021年12月号より抄出)
                                
スマホ手に檀家へ急ぐ僧若し法衣を風にふくらませゆく         吉田ヒロミ   
姫蒲の細き葉陰に気配消しムギワラトンボしのびの脱皮         吉田 征子
ようやくに開きし花は気づかれて一つ二つともらわれてゆく       大越由美子
見えるもの見えざるもの等(ら)一堂に人とヴィルスのオリンピアードよ  大瀨  宏
秋雨の庭に倒れしコスモスを哀れむごとく白蝶の舞う          大津タカヱ 
自暴自棄に陥らんとき友の声一緒にお茶を飲みませんかと        岡田 節子
疲弊した血管の悲鳴聞きいれば樹木が水を吸い上げる音         勝地 健一
吹き寄せし花と戯るる昼下がり「おごはんごっこ」思い出さるる     金子貴佐子
どこまでもあくまでも青 純粋な秋の一日(ひとひ)が心をあらう     菅  篁子
衰えの増しゆく我ら元気だと嘘ぶくことも慣れればおかし        木村 浩子
岸壁を激しく攻めて来る波をテトラボッドが許さず砕く         廣本 貢一
何を待つ草蜉蝣か芹の花に生のこもれる薄羽ひからす          近藤 史郎
蜜蜂の巣箱の下に滑走路着陸離陸する豆機たち             髙見 俊和
空青し風もよろしと飛び立つや薄の穂絮は峡(かい)の真昼に       高本 澄江
八月のその朝八時十五分ひとりひとりにあったその刻(とき)       豊田 敬子
鼓の師母の通夜(つうや)の枕べに「当麻寺(たいまじ)」のひと節たむけたまいし 中谷美保子
かって読みしヘレン・ケラーの自叙伝が思われやまずパラリンピックに  中村カヨ子
くちなしの白き花びら黄ばみたり潔癖なるものの持続は難し       中元芙美子
煌煌(こうこう)と照る満月に畏(おそ)れあり雲のかかれば心ほぐぐる   濱本たつえ    
贈り主と同じ名つけしぬいぐるみ小さきクマのAlexandra(アレクサンドラ) 弘野 礼子


2021/12/01

2021(令和3年)12月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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2021年(令和3年)12月号

研究 細井平洲の巡村講話-古典の小径152- 加藤定彦      
尾上柴舟のうた 249 澤田久美子 上田勝博  山本光珠  
内面客観の道をたずね 山本康夫作品鑑賞 142      
                  石井恵美子 高本澄江 宮﨑孝司  近藤史郎
                  豊田敬子  森ひなこ  黒飛了子  佐藤静子 
【異文化essay】42 Tomorrow is another day.(明日という日もある)田中淳子 
[短歌時評]29「河北歌壇の顔」と呼ばれる人   上田勝博
佳品嘆美*159〈万葉集〉〈小島ゆかり〉山本光珠  森ひなこ 
作品評  大垰敦子  吉田ヒロミ 水野康幸  岡田寿子  大瀨 宏  月原芳子 
     濱本たつえ  
作品抄出 弘野礼子  柴村千織  井原弘美 
再録   真樹の曙―旧号抄録 174
真樹のうたびと 山本康夫 / 志田原茂子
他誌抄録 122
記   真樹サロン短歌会記 112 田中淳子 
    後記

山本康夫の歌
わが半折正面の壁に掲げあり目に見むとしてしたおそろしき
わが書ける文字のつたなさまざまざと見るにたへねば眼(まなこ)そむけぬ
劣等感堪ふるすべなみわが書よりそむけしまなこ再び向けず
                 『薫日』(昭和十二年刊)────全国書道展にて

20首抄(2021年11月号より抄出)
摘みきたるふきの葉につく蟬の殻(から)この蝉の声も聞きたるならん   廣田 怜子
過ちを許すも肝要と知りており心によする大波小波           松尾 美鈴 
直(じか)に見ること断念し検索し「揚州八怪」の画像に見入る      水田ヨシコ
武器のなき証しの握手ならずして肘(ひじ)にふれあうG7たちは      村上 山治
はつ夏の空にスケートリンクありしゅっと滑るは燕の夫婦        森 ひなこ
玄関に置きある埴輪は亡き夫の社会科授業に用いたるもの        森重 菊江
雨の日は画集を開きクリムトの黄金の中に心を浸す           新井 邦子
青蜥蜴(あおとかげ)ひとつうねうね見え隠れ草分けゆけばしたたるばかり 大瀬  宏
朝の道つゆ草のはな藍ふかくここは花野ぞ旧街道へ           折口 幸子
ながらえぬ森青蛙はオスプレイ飛ぶ街の隅の古寺の森にて        金子貴佐子
食べきれぬ西瓜望んで種とばし幼娘の壮大な夢             勝地 健一
やみに舞うほたるの恋のひとときよ地上に生(あ)るる星の世界よ      川口 浩子
遠き街の夜の点滅にんげんの領ならん空しずかなるかも         黒飛 了子
渋滞続く相手車線の運転手夕日を浴びて顔はいらだつ          小畑 宣之
雷長くとどろく窓の稲光に身をかたくして静まるを待つ         鈴木 敬子
水の神火の神祭る昭和初期炊事場浄(きよ)めし祖母の振る舞い      竹添田美子
茂みには野太き声して牛蛙がんと構えつ三尺の先            龍野日那子
何者の来るも拒まぬ青天にグレーのメガビルまたひとつ建つ       月原 芳子
世の中に起こる大禍を気にもせず季ごとの花は咲き盛るなり       富田美稚子
庭のプールの子らの顔ぶれ日替わりなり親の仕事によりてそろわず    延近 道江


2021/11/01

2021(令和3年)11月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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山本康夫の歌
火焔山人住むをこばみ風塵のなかの遺跡の種族らいずこ
風砂すさぶ莫高窟の奥深く限りなし仏教文化の遺跡
莫高窟の仏教聖地に書き遺す人の悲しき貌に魅かるる
地下深く整然と並ぶ俑群の表情なべ昏き何故
凶作のつづくを怒り切りしとか首なし石像果てしもあらず

      『山本康夫全歌集』(昭和六十三年刊)──天山・ゴビ幻想(テレビに見て) 

20首抄(2021年10月号より抄出)                                 
ばあばあーと幼き我の泣きさけびやまびこ聞こえし爺爺岳(ちゃちゃだけ)の裾   永井 妙子
この夏はバケーションの響き消え静かなお店で筆記具選び      西本 光仁
コロナ禍も灼 (しゃく)熱の季もものともせずオリンピックの開催決まる  平本 律枝
ホームにて不意にもらったストレスが五体をめぐりメガネがくもり来   松井嘉壽子
信じたる信じたる人の行いに辛き日すぐる憎みもできず         松尾 美鈴
土葬にて葬(はぶ)りたりける墓に見し桔梗の花に祖母の笑み見ゆ     宮﨑 孝司
「海の日」や「山の日」よりも「平和の日」をヒロシマ、ナガサキの原爆の日を 守光 則子
ドローンの光にかがやく地球生(あ)る東京五輪の始まる夜を       柳原 孝子
東京五輪 競泳ののちのテレビには父島の海の魚も泳ぐ         山本 真珠
東(ひんがし)へ南へ部屋をかえ夏は北の角部屋われを迎うる       山本 全子
見事なる真夏の桜を咲かせたりスノーボードの横住さくら        米田 勝恵
孵(かえ)さんと身じろぎもせぬ鳥の目に映る果てなき空と海原      上田 勝博
アンコールワットの朝日を見るために午前四時世界中から集う      宇吹 哲夫
寛解と医者に告げられ笑む夫に我の体の鉛とけゆく           榎並 幸子
オリンピック反対論多かりしかど活躍を見て広く湧きいん        大越由美子
冒頭のわずか五分のピクトグラム言語をこえて希望を繋(つな)      大垰 敦子
降り続く雨の音するひまひまに裏山よりをせみ鳴く声す         金尾 桂子
鞆の浦さよりは列なし潮風に身を遊ばすよ日がな一日          佐藤 静子



2021/09/29

2021(令和3年)10月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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2021年(令和3年)10月号

研究 芭蕉堂良大と香畦の手紙-古典の小径150- 加藤定彦      
尾上柴舟のうた 247 上田勝博  澤田久美子  山本光珠  
内面客観の道をたずねて 山本康夫作品鑑賞 140      
                  石井恵美子 高本澄江 宮﨑孝司  近藤史郎
                  豊田敬子  森ひなこ  吉田征子  佐藤静子 
【異文化essay】40 bed of roses(安泰な暮らし)田中淳子 
[短歌時評]28 現代短歌新聞「広島県の歌人」を読む 森ひなこ
佳品嘆美*157〈万葉集〉〈宮 柊二〉山本光珠  近藤史郎 
作品評  大垰敦子  吉田ヒロミ 山本光珠  岡田寿子  月原芳子  大瀨 宏 
     濱本たつえ 新井邦子 
作品抄出 弘野礼子  柴村千織  井原弘美 
再録   真樹の曙―旧号抄録 172
真樹のうたびと 山本康夫 / 津村富枝
他誌抄録 120
恵投書架
記    後記

ご案内 -2021年10月-
真樹サロン
   日時 10月22日(日)13時
   会場 真樹社               
   会費 500円(10時来会者は不要)
   出詠 1首を担当の新井邦子へ
   締切 10月15日


山本康夫の歌

熔岩をしつらへられし浴槽に熱きいで湯のあふれこぼるる
海潟の湯よりいづれば海はるか雨あがるらし波もきらひて
湯にほてる体さますとみんなみの海に向く窓みな開け放つ
旅にさへ選歌の稿を携へて追はるる思ひわが生(よ)に尽きず
携ふる歌稿の束を選びつぎ憩ふゆとりもなき旅終る

              『槙の実』(昭和二十八年刊)──昭和二十七年──桜島

20首抄(2021年9月号より抄出)
                                 
高齢者を優先となす接種はも儒教的なる弊と言わんか        滝沢 韶一
駅舎まで一直線の街路樹の楠を見渡す今朝の梅雨入り        竹添田美子
オルゴール過ぎ去りし日をノスタルジックにコロナコロナとうたう日は何時(いつ)   月原 芳子
過ぎし日の苦しきことを青空へ両手にかかえ放てきっぱり      津田 育恵
名作を残せる式部を思わんと石山寺にわれも詣でく         中村カヨ子
年とりて独り暮らしの通院は仕方のなきを医師はほめます      平本 律枝
休みいし練習始むと竪琴(たてごと)の弦の一本一本を撫(な)ず     弘野 礼子
老いたれば誰もが独り寂しさも誰もが抱けりこれぞ人の世      古澤 和子
庭先を八羽の子燕旋回す兄弟従兄弟ふざけあいにつつ        松尾 美鈴
過去のみは完全にわがものとなる明日のことなどケセラセラなり   森重 菊江
教室ののちなる会話はずみたりわれの記憶に歌友の名増ゆ      柳原 孝子
深紅なるジューサーに果実圧搾しはじめて飲みぬ七夕の夜      山本 真珠
小走りに雨の舗道を渡り来て飛び立ちにけりせきれい白き      石井恵美子
雨の日に塵(ごみ)出すわれへ傘をさし手伝いくれしゆきずりの人    岩本 淑子
危篤知り遠方からを駆けつけしに親子の再会許されぬとは      岡田 節子
電線に胸はりて声はずませる初燕 マラソンの勝者のごとく     岡田 寿子
コロナ禍のすき間に入れる美術館「鮭図」の前に女(おみな)寄りたり    金子貴佐子
梅雨の神の荒きすさびやこのゆうべざくろの花の朱をかき乱す    黒飛 了子
充実の形に百花つけし樹(き)がわがまどろみを侵しきらめく      近藤 史郎
お祭りも盆踊りもみな中止なり世は黙り人足早に行く        隅出志乃惠
2021/09/06

2021(令和3年)9月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
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2021年(令和3年)9月号
研究 雲助志願者の日記から-古典の小径149- 加藤定彦 ・ 外村展子       
尾上柴舟のうた 246 福光譲二  岡田寿子  山本光珠  
内面客観の道をたずねて 山本康夫作品鑑賞 139      
                  大垰敦子  澤田久美子 村上山治  西本光仁                      
                  吉田ヒロミ 吉田征子  野坂昭雄  黒飛了子  
【近現代歌人の一首】41〔雨宮雅子〕近藤史郎
佳品嘆美*156〈万葉集〉〈佐伯裕子〉山本光珠 森ひなこ 
作品評   宮﨑孝司  月原芳子  山本光珠  滝沢韶一  大瀨 宏  高本澄江  
竹添田美子 大越由美子 新井邦子  上田勝博  弘野礼子
書評    岡田寿子  新井邦子
作品抄出  豊田敬子  山本全子  勝地健一
再録  真樹の曙―旧号抄録 171
真樹のうたびと 山本康夫 / 蒔田うめ
他誌抄録 119
記   真樹サロン短歌会記 110 村上山治       
    真樹誌上短歌大会ご案内
    後記

ご案内-2021年9月-
真樹サロン
   日時 9月26日(日)13時
   会場 真樹社               
   会費 500円(10時来会者は不要)
   出詠 1首を担当の新井邦子へ
   締切 9月15日

山本康夫の歌九月号
今朝がたより心覆ひてありし影つきつめみればたわいもあらぬ
かかる小さきことに心を責められてわがありたるはくやしきごとし
世に受くる衝撃はみな歌に詠み詠めば忘れてゆくぞおもしろ
はやりくる歌にはしまぬおぞ心われのまたまとひた守りつつ

               『麗雲』(昭和二十二年刊)──昭和十五年──たまたまに

20首抄(2021年8月号より抄出)
                                 
女二人いて「若緑がいいわね」と被爆柳に日傘をひきぬ       金子貴佐子
歩み来(こ)し幾星霜を省みて思い浮かぶは我陰の人         川口 浩子
ふつふつと湧く情念は明日知れぬコロナの渦に巻き込まれゆく    木村 浩子
柔らかに若葉青葉の山の色生きとし生けるものは輝く        小畑 宣之
今日よりを短歌習うはこの地ぞと心新たに降(お)りける明石     小巻由佳子
都会にて大病ストレスその果てに転地が効くと知人訪(と)い来ぬ   竹添田美子
雨に落ちし紅のバラ大皿に盛りて互いの痛み分け合う        田中 淳子
校内の柵より顏出すあじさいよ誰かとおしゃべりしたき表情     富田美稚子
白い花みどりの網目に伸びてゆく五月(さつき)の朝のジャスミン香る   西本 光仁
畑げしの茶の一本に新芽伸ぶ口つきてふと「夏も近づく」      廣田 怜子
父も祖父も年若くして堂々と大人としての相深くあり        古澤 和子
母のごと行く道正しある時は娘のように優し介護士         松井嘉壽子
鏡なす田は山の影映しいてその澄む水に稚苗並べり         松永 玲子
薬飲む作業をおえてベッドへと今夜ぐっすり朝まで寝ると      的場いく子
田植えなどしたこともなき乙(おと)の孫が田植え機に乗る写真届きぬ  守光 則子
ヘルパー欄に「昔話をよくされる」とメモありおのずと戦時に触るるを  有本 幸子
絵手紙を始めたわれにのしかかるやがて行わるる発表会の圧       宇吹 哲夫
時としてチクリとわれに主張せりアクリル製の水晶体は         榎並 幸子
紅梅の花のあかるさ鳥の声リハビリの道に心あたたむ          大津タカヱ
庭先に初団子虫現ると少年の顔で夫が告げたり             岡田 寿子


2021/07/28

2021(令和3年)8月号

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題字 尾上柴舟 表紙 武永槙雄「南無佛太子像」

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山本康夫の歌
親鸞聖人こもりましたる跡とありしんしんとして山気冷たし
わがみおやこもらしし庵に立ちきくや杉のこぬれを風通ふ音
昼暗き杉の木下の寺の屋根杉葉が散らふ音もきこゆる
かつかつと尾を引くごとくこだましてみ山の奥に木を伐れる音
老杉の根本に立ちてきき入れば鋸引く音もその奥どより
比叡の山深く入り来て佇むや鳴きかひしげし鳥のたぐひは
               『麗雲』(昭和二十二年刊)──比叡山(昭和二十一年作)

20首抄(2021年7月号より抄出)
海沿いのソーラーパネルに青鷺がチェスをするごと位置保ちおり   大越由美子        
道の辺に春の草花咲きみだれリハビリわれの心はずみぬ       大津タカヱ
風そよぐ古墳の丘に幼らと埴輪(はにわ)の馬のいななきを聴く     折口 幸子
被災地の定点観測十年(ととせ)経て今後もと言うカメラマンらは   川口 浩子
平凡な日常こそが幸せとどこまで知るぞソファなる犬は       菅  篂子
この星はコロナウイルスに侵さるれど花も咲きたり緑も芽ぶく    小巻由佳子
松手入れ庭師は一切私語を断ち松の心になりきり励む        廣本 貢一
木々眠るなかを咲きいる寒椿雪を食(は)みしに赤々として      近藤 松子
柴舟のこの世の影かと詠(うた)われしその意ようやく解かれたりけり 笹田四茂枝
好きなるを職業にする吾(あ)子ら見てさても我はと問いかけるなり  柴村 千織
きらきらと厚い葉の面輝けりさざんかの木が晴天告げる       隅出志乃惠
じいちゃんが赤ちゃん抱いて歩きおり寒い気にふれ大きくならん   高見 俊和
春秋に富める世代へワクチンを優先接種となすべきをいかに     滝沢 韶一
温(ぬく)き日に空を自在に飛ぶつばめ巣作りせわし春は光れり    豊田 敬子
空晴れて水の匂いを感じたり蛙の声がきこえくる今         延近 道江
神妙に花器と鋏(はさみ)を取りそろえ初弟子となり子の前に座す   濱本たつえ
昨夜見た夢の片鱗ふと浮かび思考のすべてを傾ける無駄       福光 譲二
この坂は我鍛えきぬ一歩ずつ白詰草に目守(まも)られ進む      松永 玲子
ちいちゃんが手にもて来たりリカちゃんは魔法にかけられ小さくなって  的場いく子
遠き日のナイスプレーの爽快感ふとよみがえり来るに驚く        吉田ヒロミ
2021/06/25

2021(令和3年)7月号

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題字 尾上柴舟 表紙 大瀨 宏
03062202_(2)7月号裏表紙_convert_20210625232205

2021年(令和3年)7月号
研究 
鴉山坊の教え-古典の小径147- 加藤定彦       
尾上柴舟のうた 244       岡田寿子  福光譲二  山本光珠  
内面客観の道をたずねて 山本康夫作品鑑賞 137      
                  大垰敦子  澤田久美子 村上山治  西本光仁                      
                  吉田ヒロミ 吉田征子  野坂昭雄  黒飛了子  
【異文化essay】39 ISS国際宇宙ステーション  田中淳子 
佳品嘆美*154〈万葉集〉〈岡井 隆〉山本光珠  近藤史郎
作品評   宮﨑孝司  月原芳子  山本光珠  石井恵美子 大瀨 宏  高本澄江     
      新井邦子  竹添田美子 上田勝博  濱本たつえ 弘野礼子  大越由美子 
作品抄出  豊田敬子  山本全子  勝地健一
再録  真樹の曙―旧号抄録 169
    真樹のうたびと 山本康夫/和田長一 
    他誌抄録 117
記   真樹サロン短歌会記 108 上田勝博       
    後記

ご案内 -2021年7月-
真樹サロン
   日時 7月25日(日)13時             
   会場 真樹社               
   会費 500円(10時来会者は不要)
   出詠 1首を担当の上田勝博へ
   締切 7月15日

山本康夫の歌
たひらぎの心ねがひて眠れどもおもひみなぎり夜夜深くさむ
淡淡と余生たのしむ日は遠くむほん果てなき荒き息づき
静かなる余生を待てば身のうちにめぐりて熱き血をうとみそむ
いつの日に断ち得む執(しふ)かかきみだしみなぎるものを嘆く幾たび
己をば責めつつ或は人間のうるほひとも思ふこの執着よ
老いづけば老の境(さかひ)のありときく清しき老のその境ほる
                  『朝心抄』(昭和二十三年刊)───朝の電線

20首抄(2021年6月号より抄出)
もう十分生かされしわれワクチンの評判ききて予約ためらう     山本 全子        
宍道湖のもやおしわけて現るる船隊のあり粛々と鴨         新井 邦子
見あぐればひとつひとつがプテラノドン青き空ゆく白き翼に     大瀬  宏
どんぐりの二本の大木倒されて涙のかたちの花さかずなる      大垰 敦子
雨の道ひとり訪(と)いゆく亡き友へ最初で最後の花束持ちて      金尾 桂子
真円の橙色の太陽が赤信号の真横に並ぶ              小畑 宣之
海恋うや天の涙は川に落ち水の名を借り雲を映せり         近藤 松子
ほぐれつつ奔馬のごとき雲がゆく 春の野さして走りつづけよ    澤田久美子
ここで夢語るここから走り出すアンの姿に胸躍る旅         柴村 千織
濁りなき朝の光を留(とど)めいん桜さくらの坂を登りぬ        鈴木 敬子
夫ありて子らふざけ合う春ありて今残る身に姫りんご咲く      高本 澄江
大木の椿いよいよ盛りつつたんとあじわう今日も形見を       龍野日那子
異国なる城の収まる「スノードーム」まわしてblueの気分を飛ばす   田中 淳子  
雨よ降れ弥生の芽吹きにそっと降れみなぎる今はそを放たんに       津田 郁恵
ガラス戸に激突せしやこの真鶸冷たくなるを墓地におさめぬ     永井 妙子
歌詠みて言葉の深き不思議さを幾重にも知り歌誌めくるなり     中谷美保子
黄緑の帽子が春の空に合う五人と保母と信号を待つ         中元芙美子
なめらかに細き秒針一周すうつろに目覚め一日はじまる       松尾 美鈴
猪(しし)掘りて食べ散らかしし筍(たけのこ)の地中にありし春の黄の色  宮崎 孝司
ため息を幾度かつきて日が暮れる想像もなく創造もなし       森重 菊江
2021/05/28

2021(令和3年)6月号

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題字 尾上柴舟  表紙 大瀨 宏
03060402_(2)裏表紙_convert_20210609102359

2021年(令和3年)6月号
研究 
詩人広瀬旭荘の遊歴(下)-古典の小径146- 加藤定彦 ・ 外村展子      
尾上柴舟のうた 243       上田勝博  澤田久美子 山本光珠  
内面客観の道をたずねて 136   小巻由佳子 高本澄江 宮﨑孝司  近藤史郎
                  豊田敬子  森ひなこ  勝地健一  佐藤静子 
【異文化essay】38 Japon(ハポン)さん    田中淳子 
佳品嘆美*153〈万葉集〉〈紀貫之〉 山本光珠  近藤史郎

作品評   大垰敦子  吉田ヒロミ 月原芳子  大瀨 宏  水野康幸  岡田寿子  
書評    岡田寿子  新井邦子
作品抄出  弘野礼子  柴村千織  井原弘美  菅 篁子                   
再録  真樹の曙―旧号抄録 168
    真樹のうたびと 山本康夫 / 大谷多香子 
    他誌抄録 116
記   真樹サロン短歌会記 107 新井邦子       
    私の一首          滝沢韶一
    後記
ご案内 -2021年6月-
真樹サロン
   日時 6月27日(日)10時~ 協力          
                13~15時 歌会
   会場 真樹社                
   会費 500円(10時来会者は不要)
   出詠 1首を担当者上田勝博へ(SMS可)
   締切 6月15日


山本康夫の歌
学生ら辻に売りゐしそこばくの品片づくる雨となる街
しのびやかにタンゴ洩れゐる窓の外歩みとどめて立つ暗き中
荒む世を潤すごとくバスガール発車合図す涼しき声に
働きてをとめはやさしバスの中鏡を出して顔見ることも
片手なき君もたつきを立つるとてもまれつつゆく人込の中
不自由の身を追ひ立てて働けるきみにしばらく痛むわが胸

                    『朝心抄』(昭和二十三年刊)

20首抄(2021年5月号より抄出)
仏壇の瓔珞(ようらく)壊れ畏(かしこ)みて師走の町に仏具店訪(と)う   宮崎 孝司
修道院の暮らしも難く老人ホームに三とせを世話になり妹は      守光 則子
イギリスのWEDGWOOD(ウエッジウッド)のブランドの薄きBLUE
は春の西空                            山本 真珠
馬立(うまたて)の川沿いに険し参勤道 土佐武士(もののふ)の外様の誇り  吉田 征子
籠もり居のわれの怠惰を呼び覚ますつぶてのような友の便りよ     米田 勝恵
初孫の命名なして逝きし夫嫁ぎゆく日に思い馳(は)せしや       有本 幸子
時じくの春雪降れり五階なる病室のベランダを訪(と)い来雪の子    石井恵美子
夕烏地に預くるかものの骨草に忍ばせ草かけて発(た)つ        上田 勝博
わが内に在(ま)すとう鬼は数匹か「鬼滅の刃」を読み終えて思う    大越由美子
冬の夜の手花火見たり降る雪をまとい嵯峨菊うつろに咲けり      勝地 健一
肌のうちにあふるる太陽あるごとく黒人メンバーかがよい走る     近藤 史郎
雪垂りを待つはヒヨドリ南天の赤き実のぞくその一瞬を        澤田久美子
凍る夜にふとよみがえる手の温(ぬく)み記憶の底の君に驚く       柴村 千織
庭の辺のメダカの宿の薄ら氷(ひ)を解かして春へと光ひとすじ      鈴木 敬子
できること一つずつ減る中にてもまだ力ある少しをよろこぶ      隅出志乃惠
散歩する道辺に梅の芽があまた ほのかなぬくみもらいて進む     高見 俊和
畑すみに霜焼け色の葉を広げタンポポは今春へ助走す         高本 澄江
冬枯れの少しく遠き野の道を亡夫の墓へと日はやわらかく       津田 育恵
はや春の陽気をのせて澄みわたる罪なき青空こころを染むる      富田美稚子
イルミネイトの色寒々しきその窓の内の明かきに円(まど)居思わる   福光 譲二