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2019/05/30

2019年6月号「前号20首抄」

   20首抄(2019年5月号より抄出)ー    

   四月 花の動悸()たなごころに包む交わす言葉の新しき朝           槙 富記子
   病には一つは治る道ありと我はも信ぜりたどりつくまで             森  光枝
   夜のはざまゾンビがウロウロかけまわる虫 花 動物 わが殺生せし       森重 菊江
   琉歌詠みそに曲付けし夫婦愛人間の象徴ともいうべくゆかし           守光 則子
   砂糖抜きチョコレート添えコーヒーを イースターの朝ビターに締めぬ      山本 真珠
   届きたる「真樹」誌巻九十第三号きみどり清(すが)しき蝶蝶を配す        米田 勝恵
   「真樹」誌の表紙の蝶よ三月は若草色して香気のぼらす             石井恵美子
   二親に感謝を示すそのためにどこまでもわがしかと生きなん           大森  勝
   美波羅川の堰(せき)落つる水のゆたかにて北へ北へと流れてゆけり          折口 幸子
   管理機に声をかけかけ畑を鋤()く風まだ寒き春の入り口            金尾 桂子
   うぐいすが上手に鳴いたとまねし夫野太き声も今はなつかし             木村久仁子
   珈琲(コーヒー)に今日は砂糖を 日ざし澄む窓辺の席につく春隣         澤田久美子
   久々に熱燗(かん)交わし夫と子は伊予の地酒に里を語れる            鈴木 敬子
   この春はそぞろ心の波うねるお代がわりの格別の年               隅出志乃惠
   蜘蛛の巣を光の網に変えにける露玉のこの危うさ称(たた)う           高本 澄江
   八十()路とは化石のごとく穏しき日新人類の余香は失()せぬ         滝沢 韶一
   封筒より三月号を手にすればラブレターのごと心躍るも             富田美稚子
   思い出も恋も涙もその背(せな)にかくすが男とわが夫に知る           永井 妙子
   大叔父は海軍士官で終戦を迎えし後(のち)を人と交じりえず           中村カヨコ
   われと子は遠く離()るるもLINE(ライン)にて撓(しな)うばかりにデータを交わす 日野 幸吉

2019/05/06

2019年5月号「前号20首抄」

   20首抄(2019年4月号より抄出)ー    

  
暖冬の安き甘藍捨てきれず屑(くず)にはせぬと急ぎ採りたり             堀部みどり
      朝集う我ら仲間は厚着して冬毛となれる柴犬を撫()ず               村上 山治
  内面を客観せんをさえぎりて内なる弁護士すぐに旗ふる                 吉田ヒロミ
  献体に供して内臓の無き吾()子を抱きて明かしき通夜の夜を            米田 勝恵
  シクラメン賜()びし友突と入院す花色見てはその上()を案ず             脇家登美子
  手に入りて卓の上なる他人顔バルサミコその謎の漆黒                 新井 邦子
  垂(しだ)れ梅枝を丸めて駕籠(かご)のごとゆるる枝の間に佐保姫御座(おわ)す 有本 保文
  爪をとぎ心をすまし思い描き一音にこめ弦を奏でる              上田 勝博
  暗闇に灯(ともしび)浮かび友いずこ五十二階の空中すみか           榎並 幸子
  古希すぎて生きいる証しを誌上にてつづることのみ生きがいとせん       岡田 節子
  リモコンの「風量切替」おしたれば音なき部屋は少し喜ぶ           喜多 敏子
  手術後に福山雅治の夢を見る夢にも思わぬ人の夢とは             後藤 祝江
  岩陰に緋鯉二匹いる冬の川夏の洪水よくも耐えたり              小畑  宣之
  介護士を目指すと通いいし肖さん姿見えぬを誰も語らず            小巻由佳子
  短歌書く冬の頃にはなぜかしら母が若くて父も同じき             佐々木孫一
  ゴムまりの弾むがごとくきびきびと君は笑みつつ人に尽くせる         柴地 暁子
  豪雨にて流されし墓所ようように再建なるを見届けにゆく           竹添田美子
  伝統の真樹の冠 重くして総身に走る雷(いかずち)の声            月原 芳子
  弟は病に負けず仏像が完成間近と心残すか                      難波 雪枝
  我が生(せい)は唯一無二の生ゆえに歌えはしない人工知能に            西本 光仁
2019/03/31

2019年4月号「前号20首抄」

   20首抄(2019年3月号より抄出)ー    

  匂いごと胸に抱えて古書店のお暗きレジの前に立ちけり          長嶋 彰子
  壁にはう蔦かずら紅(あか)く色づきて無住の家を秋に染め上ぐ       延近 道江
  くれないの葉先かわいてカラカラと冬のプロローグ坂のぼり来る        北條多美枝
  紫木蓮一夜のうちに葉を落とし庭より師走ついたちとなる         松井嘉壽子
  良寛は七十四まで生きしやなど思いて遊ぶ愚直の子らと          的場いく子
  柿の実のえもいわぬその柿の色照りかがやけりテーブルの上に       矢追 房子
  道端で片方だけの手袋が対を探さんと北風に乗る             井原 弘美
  うたかたの夢物語みてましたわが家に帰り感謝の香たく          岩本 淑子
  荒れ野には黄巾賊(こうきんぞく)が立つごとく泡立草の大群の波      上脇 立哉
  ドライブの伴(とも)が母われかと思()えど小春日の安芸の小京都よし   大越由美子
  猫ひとつ鳴かぬ夜の闇恋い猫の春も許さぬ人の無情よ          大瀬  宏
  閉ざされた母校は粋に自治の場と建て替えられぬ和みに行かん      岡畑 文香
  両の手で二つに林檎わりし日のベクトルは今いずこに向かう       勝地 健一
  母植えしろう梅の香の漂いて独りの淡き我が新春賦           金丸 洋子
  がん細胞小さくなると言うに吾()はよろこべないもうひとりの吾のいる 後藤 祝江
  冬の夜の闇よりもなお冥(くら)きなり耳削()ぐ自画像の吾()を見る眼 近藤 史郎
  ウリ坊よキミ棲()む山の麓(ふもと)より紅葉の錦いま燃えたつぞ    笹田四茂枝
  軽トラを田に横付けてもみ燃やす脇で坊やが水を得た魚(うお)        高見 俊和
  灰色の空に響ける虎落笛(もがりぶえ)(おの)が心の惑い慰む      田中 淳子
  バラの香のあふるる中に夫といて茶を飲む日々を幸とや言わん       豊田 敬子

2019/02/25

2019年3月号「前号20首抄」

   20首抄(2019年2月号より抄出)ー    
    
  敗色濃き戦況に民満載され船倉深く命をつなぐ               滝沢 韶一
  枯れすすき晩秋の風にふれ合いて「えびの高原」蒔(まき)絵のごとし   月原 芳子
  霜月尽千両の黄の増し増すにあとわずかなる今年と思う           富田美稚子
  教会に大きなリース飾られて師走の風が見届けに来る          中元芙美子
  遠地の友伴いきたる宮島に雨にぬれつつ鹿は寄りきぬ          難波 雪枝
  未完成の絵を観()るごとくマティス観るじっと観るんだ完成するまで  西本 光仁
  いつしらずカレンダー残り一枚とわかりいてまた聞けばおどろく     廣畑佐か江
  死ぬまでを狭き生け簀()でストレスと戦うハマチと知りながら買う   福光 譲二
  深霜の朝日にとけて玉の露一葉一葉にやどり光れり           松尾 美鈴
  つとめ終え紅葉したる桜木は幹艶やかに冬に入りゆく            村上 山治
  大詔奉戴日と呼ばれけり大戦の始まりし日ぞ七十七年前         守光 則子
  クリスマス・キャロルを歌い終わるころ東(ひんがし)の空白み初めしか  柳原 孝子
  羽織はかまの女先生のオルガンに和して歌いき天長節を         米田 勝恵
  外来種セイタカアワダチサウの黄の枯れて空には青の深まる       和田 紀元
  ぐわぐわと獣のごとき声あげて群烏は庭の柿の実あさる         有本 幸子
  初春の潔き空に背を押され未知なる世界の扉をたたく          井原 弘美
  人波に両手(もろて)をあげて撮らんとす福笹を売る舞妓()の笑みを   宇田 文子
  ひゅうひゅうと風雪を巻き余すなく見するは穂高の雪の鋭鋒       金丸 洋子
  川は流れ映れるビルの灯も揺れて秋の日暮れは駆け足でくる       小畑 宣之
  真白なる封書を投函(かん)せし朝(あした)ふり向けばはや町は冬なり   澤田久美子


 
 
2019/01/27

2019年2月号「前号20首抄」

   20首抄(2019年1月号より抄出)ー    
    

  なにごとか思いて留まる蟷螂の秋のさ中のわれにも似たり         笹田四茂枝  

 「あなたも要る」の「も」は絶対の者でなしわれは遊離基フリーラジカル 柴地 暁子

  土手ゆけば炎と見ゆるヒガンバナ猛暑の日々も下火と知りぬ        高見 俊和

  集う日がわが生きがいとなれるいま孫らのハグにぬくもりを得る      龍野日那子

  夏に見る青き記憶は妄想の朱(あか)と重なり少女が映える         田中  祐二   

  むくげの花朝(あした)に咲きて夕べ散るひと日の命いま音をたつ      永井 妙子

  ぶらんこのひとりが帰りゆうらりと夕日をのせる団地の公園        長嶋   彰子
     深()山にし夢殿見れば草むせり訪ね来る人多からざらん        中村カヨ子

  これの世に生きてしがらみまとえども志ひとつ持ちてゆきなん       光井 良子

  人の世はかりそめならず夫逝きて無縁の町に日々見るは海         宮迫千鶴子

  赤き芽を見せて張り出す紅葉の木雨つぶのせて静かにゆるる        矢追 房子 

  さりげなく言葉交わししかの人に心傾くと占いにあり           上田 勝博

  抱き上げし幼のにおい残りいるわれとわが身にひたりてひと日         榎並 幸子

  透明のジンのグラスに一滴(ひとしずく)レモンは神の使いなるべし     大瀬  宏

  穂芒の一筋までも輝かせ今日の光は澄みわたりたり            岡田 寿子

  引き揚げの父母の心に思い馳()せ友を誘いて舞鶴の地へ         岡田 節子

  たぎる湯に菠薐草のまみどりを放てばひとつの憂い流るる         折口 幸子 

 「朝めしまだか」と呼ぶ人はなくうつろなり露おくバラを一人摘みたり  木村久仁子

  百歳になりたる人よご詠歌に打ちゆく鉦(かね)のリズム正しく       小巻由佳子

  歌よみて心なごめるこの日ごろ詠めず苦しむ時もありうる         近藤 松子




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