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2018/07/04

2018年7月号「前号20首抄」

       ー20首抄(2018年6月号より抄出)ー

 病む者は病院にいて春は来ぬ親は静かに天国にあり             佐々木孫一
 いますならあれもこれもと思われて父逝きし日の桜仰ぎぬ          鈴木 敬子
 晩冬の鬼灯色の夕焼けは人恋しさの引きがねとなる             時村 真紀
 春なのに日々病室にいる我は夫(つま)の気苦労おもい涙す          富田美稚子
 氷上に繰り広げらるる競技見て声出す顔出す愛国心はも           中村カヨ子
 落書きを連ねて心底をつき真夜中の灯をともしてみたり           鍋谷 朝子
 桃の木の整枝究めて刃の秀(ち)びしはさみを布にくるみて捨てず       藤田 久美
 生(あ)れし日の己をしらぬわれなれば不幸も夢のひとかけらとなる      北條多美枝
 北は笑み昨日の敵を今日許し赤の鍬(くわ)振り穴を掘るなり         松井嘉壽子
 親切の押し売りいらぬ施設にて老人たちはあまりしゃべらず         的場いく子
 春うらら花見をよそに出稽古ある今日の色決むルージュは淡く        水田ヨシコ
 ノスタルジー花冷えの空に放ちつつ三江線に過ぎし日たどる         米田 勝恵
 うすき眉書きたす朝の窓の外(と)に今年の桜はや散り始む          宇田 文子
 次々と春の日あびてビオラ咲く柴の子犬の顔にも似たり           榎並 幸子
 箒(ほうき)持つ魔女の領する氷上をストーンは走る「チャーム」によりて   大瀬 宏
 三江線の江の川沿いに神楽舞継がれて八十(やそ)神、恵比須と伝う      折口 幸子
 まさぐればまさぐるほどにのめり込む歌とう沼にきょうもとっぷり      勝俣 孝治
 夕せまる暗緑深き河底に愛執の鎖しずめんとして              金丸 洋子
 maintenance(メンテナンス)と軽くかたづけ言う人よ波は襲いぬ人権無視の  木村 浩子
 オレンジの明かりまたたくシーサイド海は夕なぎ金銀の波          小畑 宣之
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